ワーカーズ677号(2026/4/1)   案内へ戻る

  米国・イスラエルはイラン攻撃を直ちに停止すべきです

 米国とイスラエルによるイランへの先制的な攻撃により、中東地域の緊張は急速に高まっています。これらの行為については、国際社会から強い懸念と批判の声が上がっています。国連憲章は武力行使を原則として禁じており、例外は自衛権の行使、もしくは国連安全保障理事会の決議に基づく場合に限られています。今回の攻撃はこれらの要件を満たしているとは言い難く、国際法違反の疑いが極めて強いと言わざるを得ません。

 こうした中で、日本政府の姿勢も厳しく問われています。憲法第9条は戦争放棄を明確に定めており、日本には国際法を尊重し、平和的解決を求める責任があります。しかし、現状の対応は米国への批判を避け、結果として軍事行動を容認しているかのように受け止められかねません。

 三月に行われた高市早苗首相とドナルド・トランプ大統領との会談でも、日本側から明確な懸念や自制を求める姿勢は見えにくく、むしろ同盟関係を優先する対応が際立ちました。こうした姿勢は、日本が米国の軍事行動に引き込まれていく危険性を高めるものです。

 さらに看過できないのは、日本の基地が実質的に軍事行動の一端を担っている可能性です。沖縄・辺野古に関連する米海兵隊がホルムズ海峡周辺へ展開したとされる動きは、日本の基地が遠く離れた地域の武力行使に利用されている現実を示しています。これは、日本が意図せずとも戦争に関与している状況とも受け取られかねず、平和主義の理念に照らして重大な問題です。

 加えて、自衛隊派遣の議論も現実味を帯びつつあります。後方支援であっても関与が拡大すれば、実質的な軍事参加へとつながる懸念は否定できません。政府には、こうした連鎖を断ち切る明確な意思と説明責任が求められます。

 エネルギーの多くを中東に依存する日本にとって、安定供給は重要です。しかし、そのために軍事的関与を深めることが許されるわけではありません。再生可能エネルギーの拡大などを通じて依存構造を見直し、平和的な道を選択することこそが求められています。(弥生)


  〝ノーと言えない〟米国依存の高市外交――どこにいった〝法の支配〟――

 高市首相の訪米による日米首脳会談は、〝法の支配の擁護〟というこれまで掲げてきた日本の外交方針の基本的立場の軽さ、いい加減さをあからさまに示したものだった。

 今回の首脳会談では、とりあえずはトランプ大統領の歓心を得たかもしれない。が、日本のこれまでの外交方針が、単なる使い分け・詭弁であることが重ねて露呈したものとなった。要するに、日本外交の手前勝手な〝二重基準〟が、いままた露わになったからだ。

◆臆面無き〝抱きつき外交〟

 3月19日に行われた日米首脳会談では、トランプの米国への追随姿勢がまたも露わになった。

 この会談は、かつて目にした場面の〝デジャブ〟を想起せずにはいられなかった。その〝既視感〟というのは、安倍元首相の訪米による一期目就任前のトランプとの会談だ。

 安倍元首相は、第一次トランプ政権が正式に発足する前の2016年11月17日にニューヨークのトランプ・タワーの居宅を訪れて会談し、翌年2月には就任直後のトランプ大統領の〝別荘〟であるフロリダのマール・ア・ラーゴを訪れ、ゴルフにも興じた。

 11月の会談はまだオバマ大統領の任期中で、各国首脳は現職大統領の存在を配慮して、就任前の次期大統領と会談することはなかった。西欧の指導者も当然のことながら、次期大統領との会談などしなかった。

 当時のトランプ次期大統領といえば、大統領選で勝利したにもかかわらず、当時の西欧諸国などの政治指導者から歓迎されてはいなかった。当時の独メルケル首相をはじめ、トランプ大統領の粗野な言動に対する蔑視姿勢も伝えられていた。

 そのトランプはといえば、まだ世界の政治指導者とどう向き合っていくか分からずに、ニューヨークの自宅やフロリダの別荘で漫然と過ごすだけだった。

 そこに各国首脳の〝配慮すべき外交姿勢〟を顧みず、世界に先駆けてトランプの居宅を臆面も無く訪問した安倍首相。不安と孤独にさいなまれていたトランプ次期大統領にとって、唯一、次期米国大統領としての自分を承認してくれた盟友として歓喜して受け入れた。このエピソードは、就任後のトランプ大統領が、独のメルケル首相をはじめとした西欧各国首脳に冷淡な態度をとり続けた遠因となった、と言われてきた。

 この一件を教訓としたのが、今回の高市首相訪米と日米首脳会談だった。その訪米では、最初から〝抱きつき外交〟ならぬ見え透いた〝ハグ〟から始まった。両者による会談の冒頭でも、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」などと、西欧メディアからも揶揄されたような、歯の浮くような〝お世辞外交〟を展開した。まったく、ベネズエラやイランに先制攻撃を仕掛けたことなど無かったかのような持ち上げ方だっだ。

◆ダブル・スタンダード

 その米国とイスラエルによるイラン攻撃。国連憲章など国際法に反する明らかな先制攻撃だったし、双方による交渉さなかの武力攻撃でもあった。両国によるこの攻撃の目的は、イランの核開発の阻止やミサイル能力の破壊だとされた一方、イランの神権体制の転換にもあるとされた。が、イランの体制転覆は、イランの国民自身、何よりイランの一般民衆の正当な権利であり、その当事者たち自身が闘い取るべきもので、超大国が武力攻撃で実現するものではないハズだ。

 実際、西欧諸国のスペインやイタリアの首相など、先制的な武力攻撃を非難する国や批判的な態度を示す国もあるなか、日本は、米国とイスラエルによる武力攻撃を〝法の支配〟に反する先制攻撃だと認めない、という態度で、実質的には両国による武力攻撃を容認する姿勢に終止している。あのベネズエラでの武力攻撃と大統領の拉致という前代未聞の攻撃と同じく、米国の武力行使には一切異議を唱えない、という姿勢に終止している。あのロシアによるウクライナ侵攻や南シナ海での中国による〝力による現状変更〟への批判とは正反対の態度は、手前勝手な〝ダブル・スタンダート=二重基準〟だ、という以外にない。。

 そのイラン攻撃で米国は、米海軍佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦トリポリを、沖縄の第31海兵遠征部隊を同伴させてペルシャ湾に派遣した。また横須賀基地から出撃したイージス艦によるミサイル攻撃も報じられている。今回の米国とイスラエルの一方的な先制攻撃に、在日米軍の一部を投入させるということに対し、政府は何の異議申し立てもしていない。メディアも当然の出来事のごとく報道している。

 在日米軍の海外での戦争への出撃に関しては、かつてはベトナム戦争やアフガン攻撃やイラク戦争などへの出撃に対して、反対する運動が大きく拡がった。今回も、日本各地で講義デモや講義行動などが取り組まれている。が、そうした反対行動は今現在大きな運動として拡がってはいない。その背景の一つに、日米安保体制に関する二つの〝使い分け〟がまかり通ってきた、という事情がある。

 これまでの政府による答弁などでは、外国からの攻撃があった場合、〝専守防衛〟の日本は、もっぱら敵国からの攻撃から領土を守るために自衛隊が戦い、敵国への反撃は米軍が担う、という〝盾と槍〟の役割分担で説明してきた。こうした対応には、一定の国民的理解があり、それが安保体制の容認にも繋がってきた。

 が、戦後の武力紛争などでの経緯を見れば、実態は大きく違っている。

◆〝出撃部隊〟〝出撃基地〟

 戦後は日本への武力攻撃はなかったものの、海外での戦争や武力紛争に対し、在日米軍の派遣に繋がったものは数多い。敗戦直後の朝鮮戦争を始め、大規模なケースはかつてのベトナム戦争や湾岸戦争、それにイラク戦争などだ。その都度、米軍は東京の横田基地や沖縄の嘉手納基地などから大規模に出撃した。それが今回のイージス艦や揚陸艦などの派遣につながっている。とはいえ、これらの在日米軍による戦闘行動は、本来、日米安保条約からも逸脱したものだ。

 日米安保条約第一条は、国連憲章に基づき、国際紛争を「平和的手段」で解決する、かつ、「武力による威嚇」「武力の行使」は「慎む」と規定している。また第四条では両国の活動範囲を「日本国と極東」に限定している。さらに第六条では、米軍はその範囲内での活動に限って「日本国の施設および区域を使用することを許される」と規定している。こうした日米安保条約の条項は、〝密約〟や裏約束などですでに空文と化している。

 実際、在日米軍は、米軍のインド・太平洋軍の傘下にあり、在日米軍の指揮権はハワイの同司令部に属している。つまり、在日米軍はインド・太平洋戦略を担う一部隊に過ぎず、活動範囲はインド太平洋や、今回のように米中央軍が管轄する中東地域まで行動範囲を拡げているのだ。

 こうした現実を見れば、在日米軍は日本を守ってくれる力強い部隊だ、という受け止め方も変わってくる。実際、日米安保やその運用方針では、日本の米軍基地は、インド・太平洋地域に限らず、世界のどこへでも米軍を派遣できる自由に使える〝出撃基地〟を提供するもの、になっている。仮に中東や東アジアに米軍を派遣する場合、米国本土から出撃するよりはるかに短時間で派遣できる。今回の強襲揚陸艦やイージス艦の中東への派遣も、同じ事だ

 だからこれまでの政府の説明では、在日米軍は日本を攻撃する敵国への攻撃という役割を担ってくれる存在であるはずだが、実際は、日本を攻撃する国にではなく、日本が攻撃もされてもいないのに、世界のどこでも米国が戦争をする場面での〝出撃部隊〟であり、在日米軍基地はその〝出撃基地〟になっている、という現実だ。まさに日本の政府が説明することに反して、米国が世界で引き起こす武力攻撃にいつでも協力することになっているわけだ。

 高市首相は、今回の日米首脳会談で、「日本は平和をめざす米国の行動を応援する」と言った。だが、首相は国連憲章や日米安保条約に照らしても、トランプ大統領に、武力攻撃の停止とイランとの停戦を説得すべきだったはずだ。

◆〝戦争する国家〟づくりはノーだ!

 今回の日米首脳会談では、とりあえず自衛隊の派兵は棚上げされた。憲法9条など、日本の法制などを配慮した結果だという。国連憲章違反をはじめ、国際人道法に反する先制攻撃に付き合わされることは避けたわけだが、高市首相は、「派兵しない」とは明言していない。ただ「現時点で決まったことは無い」と消極話法に終止しているばかりだ。その高市首相、自民党と維新の会の連立合意に関し、自衛隊の憲法への明記も含め、9条改憲の前のめりになっている。

 仮に改憲が実現すれば、今回の米国とイスラエルによる先制的な武力攻撃に、日本の自衛隊も加担することになるのか。そうではなく、日本が世界のどこでも超大国米国の戦闘行為に加担する〝戦争国家〟にならないためにも、単に憲法の条文に頼るだけではなく、あの敗戦の反省も込めた〝戦争をしない平和国家〟を実現するためにも、世界各国の人々と、武力攻撃、戦争反対の声を上げていきたい。(廣) 案内へ戻る


   高市外交のもたらす労働者の不利益 許せない対米巨額投資・改憲戦略

 2026年3月19日、高市早苗首相はワシントンを訪問し、トランプ大統領と首脳会談に臨んだ。表向きには「日米同盟の強化」と「経済協力の深化」を演出したこの会談だが、その実態を丁寧に分解すると、日本の国益よりも高市政権の政治的生命を優先した構造が浮かび上がってくる。本稿では、この訪米をエネルギー安保・憲法改正・対中戦略という三つの軸から検証する。

■「84兆円投資」の正体

 今回の日米合意の目玉として喧伝された対米投資総額は、約5500億ドル(84兆円)である。まず注意すべきは「これは税金が投入されない」との言い訳だ。「民間投資だからいい」と。しかし、この投資資本は日本の国民、労働者の血と汗のたまものである。本来この富を国内に導き賃上げを実現し、職場を確保すべき原資なのである。トランプに差し出すことの不当性を指摘したい。

 さらにホワイトハウスのファクトシートには「投資収益の90%は米国に帰属する」と明記されており、これは投資というより上納に近い構造である。分野はエネルギー・半導体・AI・造船など7分野に及ぶが、目玉の一つであるアラスカLNG開発は、永久凍土へのパイプライン敷設に約6.4兆円を要し、完成まで10年以上かかる見通しである。アラスカの現在の石油生産量はピーク時比80%減であり、日本が中東から輸入する原油の全量を補うことは到底できない。その見返りや投資効果もほとんど見えない。

 さらに「日米共同備蓄」構想は、日本が保有する石油タンクに米国産原油を保管するというスキームであり、エネルギー安全保障の実質的改善というよりも、依存先を中東から米国に付け替えるだけである。ロシア・中東・米国??いずれに依存しても「資源による政治的圧力」という構造は変わらない。本来、日本が追求すべきは、地熱(世界第3位の埋蔵量)・洋上風力・太陽光・潮力という国内自然エネルギーの本格活用による自立路線である。84兆円の一部でもこの方向に投じていれば、エネルギー自給率の改善は現実的であった。

■ホルムズ海峡問題と「九条改憲への坂道」

 トランプ大統領はホルムズ海峡の航行の自由確保への「貢献」を求めた。高市首相は「現行法の制約上、派兵はできない」と説明し、茂木外相は「憲法の誓約がある」として理解を求めた。トランプは「ステップアップしている」と前向きに評価したとされるが、この評価は曲者である。現状容認ではなく将来への布石であると解釈される。

 ここで見落としてはならないのが、「実績先行→齟齬顕在化→改憲圧力」という構造的連鎖である。安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、安保法制を成立させることで自衛隊の海外活動範囲を段階的に拡大してきた歴史がある。高市首相はかつて雑誌に「わが九条改正試案」を発表し、九条二項の削除と国防軍(軍隊)の明記を主張した。今回ホルムズで「法制の制約」を盾に派兵を断りながら、自衛隊の海外実績を積み上げていくことで「やはり改憲が必要だ」という世論を形成していく??この戦略的な「坂道」の設計者として高市首相動向を読むことは、状況証拠から見て否定しがたい。今回の訪米は九条改憲へのステップアップとして見るべきだろう。

■高市「中国封じ込め」戦略とトランプG2路線の齟齬

 高市政権の権力基盤を支えてきたのは「対中強硬姿勢」である。国会答弁で「台湾への北京軍の進軍は存立危機事態に該当し得る」と明言し、中国政府の激しい抗議にも屈しなかったこの発言が、保守層の熱狂を呼び、2026年2月の総選挙での史上空前の大勝を準備した。「闘う保守」「中国にノーと言う首相」のイメージこそが高市政権の最大の資産である。
 
しかし、この戦略には根本的な矛盾が潜んでいる。トランプはいまや「反中の盟友」ではない。米中首脳会談で両首脳は経済・エネルギー分野での協力強化に合意し、トランプは訪中さえ希望している。G2??米中二大国による世界管理の構図??をトランプが受け入れる方向に動いているとすれば、「米中対立を前提とした日米同盟強化」という高市戦略の土台は揺らぐ。高市首相にとって「米中が手を打つ」事態は、自らの政治的存立基盤の崩壊を意味する。

 この文脈で今回の訪米を読み直すと、84兆円の対米投資・ホルムズへの対応・蜜月の演出は、「日本の国益」どころか、トランプを「対中融和ではなく日米同盟優先」の方向に引き留めるための、きわめて政治的な貢物でもあったと解釈できる。ホルムズ海峡の緊張はもともと米国のイラン政策??核合意離脱・制裁強化・軍事的圧力??が作り出したものである。その帰結として生じたエネルギー危機に対し、日本が「派兵の代わりに巨額投資」を差し出すという構図は、加害者が被害者に費用負担を求めるに等しい。高市は強引な手法で「G2路線」の阻止と、対中包囲へのトランプの帰還を突き付けているのだ。

■「高市1強」と保守派の亀裂

 衆院単独で3分の2超という空前の議席を持ちながら、高市政権の足元では静かな亀裂が走り始めている。「プレジデントオンライン」は訪米直前の3月10日付で「保守層の高市離れが始まった」と報じ、自民党幹部から「孤独な首相」という言葉が漏れていることを明かした。その亀裂は三方向から同時に走っている。強硬派からは「なぜ存立危機事態を適用して派兵しなかったのか」、国民生活を重視する保守からは「84兆円は国民への裏切りだ」、党内穏健派からは「野党を無視した強引な国会運営は傲慢だ」??という三者三様の不満が、超多数与党の内部で渦巻いている。

 高市氏の訪米外交を評するなら、「短期的な政権維持の合理性による、長期的な人民の利益の喪失」である。高市政治と対決しょう。(B)案内へ戻る


  世界債務膨張と金融化資本主義(前) 現代資本主義の二重搾取を撃つ

 近年、世界経済の大きな特徴として「債務の膨張」が指摘されています。国際金融協会(IIF)の報告によれば、2025年末の世界全体の債務残高は約348兆ドルに達し、過去最大となりました。年間増加額も約29兆ドルにのぼり、コロナ危機以降で最も大きい増加となっています。世界GDPはおよそ100兆ドル規模とされているため、世界の債務はすでに世界GDPの約3倍を超える水準に達している計算になります(「ロイター通信」)。

■国家債務の増大

 この債務の内訳を見ると、政府債務の拡大がとりわけ顕著です。2025年末の政府債務残高は約106兆7000億ドルで、前年の約96兆3000億ドルから10兆ドル以上増加しました。非金融企業債務は約100兆6000億ドル、家計債務は約64兆6000億ドルとなっています。とくに米国、中国、ユーロ圏の政府が新規債務増加の約4分の3を占めており、国家が世界経済の債務拡張の中心的役割を担っていることが明らかになっています。つまり各国政府は財政切り盛りを国債の大量発行(債務)で対応する比重が格段に進んだという事になります。これについては「後半」に触れます。

■金融化資本主義の二重収奪

 この事象は、現代資本主義の構造変化と深く関係しています。近年しばしば「金融化(financialization)」と呼ばれる現象です。金融化とは、経済の中で金融活動や金融収益の比重が大きくなり、企業活動や家計生活にまで金融が深く入り込むことを一般的に意味します。さらにギリシャ出身の経済学者であるコスタス・ラパヴィツァスが特徴的な分析を提示しています。

 ラパヴィツァスによれば、金融化資本主義では金融資本は単に企業への融資を行うだけではありません。むしろ労働者や一般家計から直接利子収入を得る構造が拡大しています。住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、クレジットカードなどを通じて、金融資本は家計から長期的に利子を吸い上げるようになりました。これにより労働者は、雇用関係の中で賃金労働として搾取されるだけでなく、生活の場面でも金融を通じて収奪されるという二重構造の中に置かれることになります。

 さらに、金融化は金融機関だけでなく非金融企業にも広がっています。例えばトヨタ自動車のような企業は、単に自動車を製造販売するだけではなく、ローンやリース、保険などの金融サービスを組み合わせて利益を得ています。自動車販売の際にローン契約を結ぶことで、企業は長期間にわたって利子収入を得ることができます。このように製造業企業自身が金融業的機能を担い利益を補填するようになったことも金融化の重要な特徴です。

■過剰生産と過剰貨幣資本

 このような経済の金融化は、それ自体が資本主義の矛盾の産物なのです。戦後の金為替本位制=ブレトンウッズ体制が米国の経常収支の赤字増大により崩壊し、ニクソン大統領による金ドルが交換停止(1971年)いらい、過剰なドルはますます海外に流出し、「国際通貨」「基軸通貨」として世界的に運用されました。第一次オイルショックを通じてオイルマネー、あるいは、ジャパンマネーとして世界の金融市場を盛り上げ運用され、さらには米国債購入を経て米国に還流します。

 この根底には、戦後復興による世界的な資本主義の経済発展があり、新興国の発展がそれに続きまさに世界市場は過剰生産、過剰資本が顕在化したのでした。その矛盾の最初の本格的な爆発は1971年の「世界同時不況」でした。景気対策として慢性化してゆく低金利政策も「資本還元」を通じて架空資本(株式、社債、土地など)を高騰させました。かくして過剰貨幣資本は株や債権にますます投資され、プラザ合意などの経済イベントを経て空前の架空資本の高騰が発生しました。その典型的な例が日本のバブル景気(1980年代後半)だったのです。(阿部文明 続く)


  伊藤穣一とは何者か

伊藤とエプスタイン

 米司法省が公表した約350万ページにも及ぶエプスタイン文書には伊藤の名が実に約1万回以上も登場するとのこと。エプスタインと良い関係であった当時、彼はマサチューセッツ工科大(МIT)メディアラボ所長であった。エプスタインはメディアラボを9回も訪問し、メールにはジョイ(伊藤穣一のニックネーム)と親しげに書いていた。

 エプスタインは、未成年の多数の少女を人身売買し、性的に虐待したとして逮捕の後、留置場の独房で自殺した。彼は、トランプ大統領やテック界の大物ビル・ゲイツ、チャールズ英国王の弟であるアンドルー元王子などと親交があり、彼ら大物たちはエプスタインの斡旋で少女たちから性接待を受けたのではないか、という疑惑がかけられている。伊藤は彼とテック界及びアカデミアの重要な橋渡し役を務めていたと疑われている。

 確かに伊藤はエプスタイン島を2回訪問しており、その時も「証拠写真」も公開されている。だが勿論、実際に島を数回訪問していたとしても、単に写真の提示だけではエプスタインの犯罪への協力や彼自身の不適切な行為の証拠にはならない。実際、今のところ性被害者による証言の中に加害者として伊藤の名前は出ていないようなのである。

伊藤にはエプスタインから多額の寄付が

 伊藤は、МITメディアラボ所長として、МITがエプスタインから受領した総計85万ドル(約1億3000万円)の寄付の内、およそ62%を受領していた。さらにエプスタインから120万ドル(約1億8300万円)を自身のベンチャーに投資してもらっていた。エプスタインの犯罪の発覚と自殺から間もなく、2019年9月に伊藤はエプスタインとの関係を責められ、謝罪の上メディアラボ所長の職を辞しているのである。

 彼の仕事はメディアラボのための寄付金集めであった。資金調達を円滑に進めるために、各自の自宅を訪問したり、家族などのプライベートな話題についても深く関わっていた。

 実際、細かいことを言わずに大金を出してくれるエプスタインは、さらに知り合いであるビル・ゲイツなどの富豪にも声を掛け、メディアラボへの多額の寄付を引っ張ってきてくれる貴重な存在だった。エプスタインと伊藤が親密になる必然性はあったのである。

 その後の経緯は不明ながら自他ともに認めたエリートは失意の中で帰国した。だかそんな米国での経歴を持つ伊藤は、現在なぜか千葉工業大学の学長という顕職を務めている。石をもって追われた彼が日本社会では責任ある立場にある。一体なぜなのか。

 本当ならメディアの前に出て、この間の経緯をきちんと説明すべきではないだろうか。

 彼が法外な寄付を受けていたのは、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグらをエプスタインに結びつけたからである。一体何のために。それが今ひとつ明確にわからない。

平井卓也と櫻井よしこ

 マサチューセッツ工科大(МIT)を去ってから、2021年には平井卓也デジタル相が新設のデジタル庁有識者会議「デジタル社会構想会議」のメンバーに、伊藤を選んだ。その理由は「インターネット草創期からデジタル分野の第一線で活躍し、多彩な知識、専門性、豊富な国際経験がある」からだと平井卓也は述べていた。

 だがそもそもは初代デジタル庁デジタル監候補だったのたが、帰国の理由が理由のため事務次官級の扱いは不適切と判断され「デジタル社会構想会議」のメンバーになったのだ。

 さらに2023年からは千葉工業大学の学長を務める。同大学と伊藤を結びつけたのがジャーナリストの櫻井よしこである。この流れに位置づく人脈に私は心当たりがある。

 櫻井は、伊藤について「10数年前から知り合い。クリエイティビティに溢れる方で大谷翔平さんと並ぶ日本の宝ですよ」と評した。勿論、エプスタインの件は不問である。

伊藤の千葉工業大学サイトの声明

 エプスタイン文書の公開が進む中、伊藤の学長就任が問題化し、辞任要求が高まる。そのため3月3日に、エプスタインとの関係や6年前の調査報告の結果を伝えて、伊藤は「いかなる法律や規則にも違反していない」とのコメントを発表した。

 その核心は、彼が「法律事務所による独立した第三者調査を依頼し、個人のメールを含め私とエプスタインとの間のEメールは本調査において精査され、調査報告書が公表された」「当該報告書には、エプスタインからの寄付について私がМIT上級管理職に相談し、その後МIT上級管理職の承認を得て受け入れられていたこと、私がいかなる法律や規則にも違反していないことが確認されて」いるというものである。

 このように述べることで、彼は「エプスタインのEメール等に関して、憶測に基づく一部の事実誤認の報道やSNSオンライン上のコメント」に反論したのである。

 だが本当に必要とされるものは、一片のコメントの発表ではない。正に記者会見である。

小野田紀美と伊藤

 3月3日、小野田紀美科学技術相は、米司法省が公開したエプスタイン文書に記載があった伊藤への聞き取りを検討していると明らかにした。「米政府の文書の調査、聞き取りについて現在事務方に検討させている」と語った。所管大臣の当然な認識であろう。

 伊藤は内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局が所管するグローバル・スタートアップ・キャンパス(GSC)構想のステアリングコミッティー(運営委員)を務める。その任期は3月末までとなっている。

 小野田美紀は運営委員としての任用を継続するかについて「GSC構想の進捗を踏まえ、助言いただく事項を改めて整理し、どういった方に助言をいただくべきかを検討する」と述べた。今後については未定だと説明したのである。

 だがこの発言の後、この聞き取り検討の指示はなぜか撤回された。彼が千葉工大学長を辞職するからだという。しかしそんな理由での中止は実に問題である。

伊藤とEメール

 エプスタイン文書で公開された膨大なEメールを内容別に分類すると、「人身売買と性的虐待(7800件)」「訴訟関係(463800件)」「エリート人脈(22118件)」「科学とアカデミア(8095件)」「知的探求(10437件)」「慈善事業と評判回復(2407件)」となる。

 訴訟や人脈及び科学関連のメールの多いのは、エプスタインが自身の犯罪に起因する訴訟や当局からの追及を、学界やテック業界の超エリートたちとの交友や寄付によって抑え込もうと努力していたことを示している。

 またウェブ上において性犯罪者としてのネガティブなイメージが増殖していることに対して、2008年の有罪確定後からからエプスタインは「評判回復屋」を雇って対処させていたと報じられている。

 自身に好意的なウェブサイトを多数立ち上げ、悪評をばら撒くサイトを埋もれさせるという検索エンジン最適化対策を実施し、自身を科学や学問の進歩のために気前よく寄付する篤志家を演じてきた。その事実の裏付けとして伊藤のメディアラボなどに惜しみなくカネを出したと考えられているのである。

エプスタインの「失われた信用と正統性の回復」と伊藤

 こうした流れにおいて、エプスタインに最も信頼された人物の一人であった伊藤はエプスタインの「失われた信用と正統性の回復」を、寄付の見返りに提供していたと言える。

 しかも人身売買と未成年者性的虐待で有罪となったエプスタインは、マサチューセッツ工科大(МIT)によって「寄付不適格者」に指定されており、МITの倫理規定に抵触する。そのため、寄付の受け入れに際しては、エプスタインが別人や他大学への寄付を行い、それらの個人や機関がМITに再寄付するという、合法だが脱法的なマネーロンダリングまがいの手法が用いられていた。

 2020年1月、МITが第三者の法律事務所に依頼して作成した報告書によると、一方では当時のМIT副学長ら上層部はこれを黙認し続けた。また当時は、有罪認定された人物からの寄付を禁ずる明文規定もなかった。他方では伊藤穣一が寄付の出所を隠そうとしたことは、道義的にやましいことがあると認識していたからに他ならない。

伊藤への高まる疑惑

 エプスタインの犯罪疑惑への捜査が進み、いよいよ逮捕が避けられない情勢になってきた時期に、メールに続いてテキストメッセージで次のような通信を交わしている。

 伊藤穣一「君は有能な人にサイバーセキュリティを管理してもらってる? 僕は君のメールがいつも心配なんだ」
 エプスタイン「うん(管理はしてるけど)、政府レベルじゃないがな」

 この後、伊藤は当時ビデオ通話の標準であったスカイプで2人のみで会話することを提案し、エプスタイン氏と日時を設定している。メールでは話せない内容であったのだろう。

 その会話において、いかに2人の通信内容を捜査から守るかが話し合われた可能性があるが、確かなのは伊藤が守ろうとしたエプスタインとの通信内容はほぼすべてエプスタイン文書で公開されてしまったことである。伊藤に逃げ場はなくなったのである。
 エプスタイン文書で伊藤がエプスタインのために行ってきた活動が詳細に明らかになったことで、一部メディアは伊藤千葉工業大学学長に当然ながら説明責任を求めている。

 千葉工業大学はメディアの取材に対して、「学長就任時にМITの件の第三者調査報告書を含め、入念なバックグラウンドチェックを行った。問題はないと考えている」と回答した。だがその第三者調査報告書はエプスタインの有罪認定後、エプスタインからの寄付受領の大半が大学上層部の黙認の下で伊藤によって行われたと認定している。

 もし千葉工業大学が主張するように本当に「問題がない」のなら、2019年9月になぜМITメディアラボ所長を辞任したのだろうか。これが伊藤の疑惑の核心である。

伊藤は記者会見を開け

 伊藤は、メディアラボ時代を含めて「隠す」「逃げる」が一貫した姿勢である。ここまで事態が悪化した以上、確かに犯罪を犯したことへの「決定的な証拠がない」ことは、自らの疑惑への説明責任を果たさなくてよいことを正当化しないのである。
 伊藤は、記者会見を開き丁寧に答えることで説明責任を果たす必要がある。(直木)案内へ戻る


   「問わず語り」の高市早苗総理大臣

小沢雅仁参院議員と高市早苗総理大臣のやり取り

 3月16日の参議院予算委員会において立憲民主党の小沢雅仁参院議員は、1週間で10人の子供たちが自ら命を絶っているという現状を踏まえて、日本政府は子どもの自殺防止のための対策を持っているかについて、高市早苗総理大臣の考えを問い質した。
 この質問に対して高市首相は、「多くの子供さんたちにお伝えしたいのは、あなたは1人で生まれてきたんじゃないということであります」答えた後、「お父さんお母さんを2人と数えて、そしてお爺ちゃんお婆ちゃん4人、そしてひいお爺ちゃんひいお婆ちゃん8人、と数えていきますと、7代前まで直系だけで250人を超えるご先祖様が大人になり、また子宝に恵まれ、その凄い偶然、凄い奇跡的な幸運に恵まれて1人の命がある。それは自分の命の重さもそうだし、他人様の命もそうだということは是非みんなで共有したいと思います」と答えたのである。この答えに小沢議員はさぞかし面食らったことだろう
 このやり取りをどのように評価すべきか。高市総理の回答は自殺防止の方策とはちぐはぐなものだと感じた人がほとんどであろう。子どもの自殺防止の方策について、なぜ7代
前までの祖先との関係が説明されなければならないのか。きわめて異例なことである。

先祖解怨と旧統一教会

 ところが旧統一教会に関心がある人々にはぴったりと嵌る所がある。それは旧統一教会の「先祖解怨(かいおん)」による献金の勧めとその理由に近似であるとの事実である。
 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は、先祖の霊の苦しみを解き天国に送ると称して、違法で高額な献金を信者に強要する。「先祖解怨・祝福受付ガイドブック第5版」(2007年4月発刊)よると、旧統一教会は開祖・文鮮明と妻の韓鶴子の提唱で霊界にいる先祖の苦しみを消滅させるとして、1999年から「先祖解怨式」という儀式を韓国・清平で始めた。それには「子孫に悪さをする」と脅し、縄文時代の先祖まで遡って供養のための高額献金を信者に出させる手法がきわめて具体的に記されているのである。
 概説すれば、供養が必要な先祖は当初120代前までだったが、文鮮明、韓鶴子の指示で210代前まで必要になり、現在は430代前までになった。こうして1世代を20年と計算すれば縄文時代の先祖まで遡るのだ。勿論献金額を増やすための方便である。
 先祖解怨の儀式のためには「解怨献金が必要」であり、献金額は1~7代前までを一括りとして70万円。それ以後は、7代ごとに3万円である。このように旧統一教会は、「先祖解怨」は7代をひとつの区切りとして先祖供養を行っているのである。
 また旧統一教会は信者の父母それぞれの先祖だけでなく、父親の母方、母親の母方まで計4家系の先祖解怨を求める。このため210代前まで供養するためには、合計628万円の献金が必要になる。夫婦で信者の場合はあわせて8家系となるので1256万円となる計算になり、旧統一教会が信者から献金をむしり取るカルト教団であることは明白だ。

旧統一教会の教義と「問わず語り」

 これまで高市早苗総理大臣は旧統一教会の教義すら知らないと否定してきたが、このように子どもの自殺防止の対策を求められた、まさにその重要な時、突如1~7代前までを一括りとする、旧統一教会の「先祖解怨」と同様の思想を語り出して、質問者への回答とする高市早苗総理大臣の政治センスに、改めて私たちは考えざるをえないのである。
 これは問うに落ちず語るに落ちた、まさに不用意な「問わず語り」だ、と。(直木)


   「大イスラエル主義」と 中東の絶えざる戦争

 「大イスラエル」は、かつて一部の宗教右派が唱える非現実的な夢想として扱われてきました。しかし今や、それは現職首相が公言する現在進行形の政策目標となっています。2025年8月、ネタニヤフ首相はi24ニュースのインタビューで「大イスラエル(約束の地)」構想への賛同を問われ、「もちろん」と答え、これを「歴史的・精神的な使命」と表現しました。この発言は単なる選挙向けのレトリックではありません。軍事・入植・住民政策の三つが連動して動いている現実を見れば、それが実行を伴った政治的意志であることは明らかです。この現実から目をそらせてはいけません。

■「宣言なき入植地併合」という手法

 ネタニヤフ政権が採用している戦略の一つは「漸進的な既成事実化」です。正面から「併合宣言」はしない。しかし、入植地建設・軍事支配・住民排出という三つの手段を組み合わせることで、宣言なき大イスラエルを着々と作り上げていく手法です。要するにシロアリ的な領土拡張主義という事です。

 その象徴的な例が、ヨルダン川西岸「E1地区」における入植計画です。スモトリッチ財務相が、国際社会から20年間凍結されてきたこの地区での大規模ユダヤ人入植計画(約3400戸)を承認しました。E1地区への入植が完成すれば、西岸のパレスチナ主要都市ラマラとベツレヘムが物理的に分断されます。パレスチナ国家がいつか成立したとしても、その両都市間の直接移動が不可能になる??つまり、将来のパレスチナ国家を地理的に骨抜きにする戦略的布石です。

 住民政策もまた、アパルトヘイト(管理と囲い込み)より踏み込んでいます。ネタニヤフ首相はガザのパレスチナ住民の受け入れについて複数の国々と協議中であることを明かし、「パレスチナ人を憂い助けたいなら門戸を開くべきだ」と呼びかけました。交渉相手として南スーダンやソマリランドの名まで挙がっています。これはアパルトヘイトではなく、民族浄化(ジェノサイド)の発想です。

■「大イスラエル」の先にある中東覇権という野望

 旧約聖書の「約束の地」に基づく「大イスラエル」の範囲は、現在のヨルダン、レバノン、シリア、エジプト、イラク、サウジアラビアの一部にまで及ぶとされています。すなわちガザや西岸はもとより周辺諸国の併合に次ぐ併合が計画されていることになります。2026年1月現在、イスラエルは南レバノンの5カ所の「戦略的拠点」に「暫定」駐留を続け、完全撤退を拒んでいます。シリアでは2024年12月のアサド政権崩壊後、南部シリアを「非武装化」する政策をネタニヤフが正式に宣言し、事実上の分割占領を進めています。

 イラクは長年の戦乱で弱体化し、シリアは内戦と分裂状態から抜け出せていません。ヒズボラは壊滅的打撃を受け、レバノン南部にはイスラエル軍が事実上展開しています。残る中東最後の「強敵」がイランであり、だからこそイスラエルは執拗にイランの弱体化を目指しているのです。

 もし軍事的な優位状態に加えて湾岸の石油・ガス資源を支配下に置ければ、イスラエルは資源なき小国からエネルギーも掌握したパワー国家へと転換します。これは荒唐無稽な仮説ではなく、現在の軌跡を延長した場合の最も恐るべき論理的帰結です。

■ブレーキは故障している

 唯一の仲裁役であるはずの米国はどうでしょうか。エルサレムに米国大使館を移すなどトランプ大統領はイスラエルの思惑通りに動きます。さらに「二国家共存」に向けたオスロ合意を事実上捨て去ったネタニヤフ政権を強く支持しています。占領地への入植地建設にも異議を唱えず、軍事支援も欠かしません。イスラエルに引きずられてイラン爆撃に加わったように米国トランプの立場は明白です。

 国際法・国連決議はこれまで数百本のイスラエル非難決議が採択されましたが、米国の拒否権で実効性はほぼゼロでした。国際刑事裁判所がネタニヤフ氏に逮捕状を出しましたが、これも実行力を伴いません。欧州諸国の非難声明は出ても、制裁には至りません。現時点で「野望を外から断ち切る」手段は、構造的に機能不全に陥っています。

■イスラエル近隣諸国の「ガザ化」という危険な未来

 現在のイスラエルの戦略は、新たな占領地域を「完全には崩壊させないが、決して自立させない」という管理モデルへ向かっているように見えます。これは一部の研究者が「中東のガザ化」と呼ぶ構図です。例えばパレスチナ史の権威Rashid Khalidi(コロンビア大学)がガザの封鎖・監視・周期的空爆という統治モデルが、レバノン南部・シリア・イラクの一部に適用されつつあると指摘し、懸念されています。

 それは別の表現で「大イスラエル主義」の一里塚なのです。新たな占領地でパレスチナ人の囲い込みと抑圧体制が構築され「ガザ化」した後に住民の追放が計画されていると危惧されます。

 ここでは述べられませんでしたが、国内の反戦運動の質的転換と国際世論の喚起がさらに必要です。(B)


   アンソロピック「憲法AI」をめぐるトランプとの闘い――ベネズエラ、イラン、そしてガザ
 
 人工知能AIの歴史は、かつて核兵器が登場した時のような「技術が倫理を置き去りにする」重大な局面を迎えました。

 その中心にあるのは、AIスタートアップであるアンソロピック社と、強大な権力を持つトランプ政権との対立です。「公益法人」アンソロピックは自社製品の米軍の作戦利用に激しく抗議し、トランプは「敵対企業」に位置づけ政府・軍によるアンソロピックの製品の購入を禁止しました。もっともアンソロピックも兵器利用を全面禁止しているのではなく、「大規模な国内監視」と「完全自律型兵器(人間の関与なく発射できる兵器)」に使用することの2点を明確に拒否しました。

■アンソロピック?

 アンソロピック社を象徴する技術「憲法AI(Constitutional AI)」は、AIに人間のような動的な倫理感情を持たせるのではなく、明文化された「憲法(行動規範)」をAIの根幹に据えるという手法です。彼らは、AIが効率や精度のために暴走することを防ぐため、「自律型兵器への加担」や「市民への大規模監視」を明確なレッドライン(越えてはならない一線)として設定しました。

 憲法の根底には、国連世界人権宣言=「生命、自由、身体の安全」などをはじめとして、最も基本的な人間社会の価値観や倫理を尊重するための基準が優先的な「知」として主導的に学習され、それに違反できない「論理」を構築しているとか。「ミサイルの最適ルートを計算して」と言われても、「殺傷に関わるため拒否します」と答えるわけです。

 そもそも感情の無いAIに倫理は芽生えません。しかし「論理による倫理の担保」こそが、同社を世界で最も信頼されるAI企業へと押し上げ、トヨタ自動車に匹敵する巨額の時価総額をもたらした最大の要因でした。彼らにとって「憲法」とは、後付けのフィルターではなく、プログラムの深部に刻まれた「譲れない正解」なのです。しかし、この倫理的ハードル設定が、皮肉にも効率的な殺戮を求める国家権力との全面衝突を招くことになりました。

■ベネズエラ、イラン、そしてガザ 戦場に投じられたAI

 これに先立ち、世界を驚愕させたのがイスラエル軍によりガザ地区で使用された「ラベンダー(Lavender)」や「パパはどこ?(Where's Daddy?)」といった殺人AIの存在です。これらのAIは、数万人の標的をわずか20秒のチェックで爆撃対象としてリストアップし、標的が「自宅に家族といる瞬間」を狙って通知を送るという、効率のみを追求した冷酷なシステムで、ガザの惨劇の裏の主役です。

 アンソロピックは、こうしたガザでの悲劇を「AIが倫理を失った末の地獄」と捉え、自社の技術が同様の目的に転用されることを拒否しました。しかし、トランプはこの拒絶を「左翼的な独善」と切り捨て、「軍の作戦を民間企業の規約が制限することは国家反逆にも等しい」と激昂。アンソロピックに「憲法(制限)」の即時解除を迫ったのです。

 両者の対立が決定的となったのは、2026年初頭に相次いだ米国軍事作戦におけるAIの実戦投入でした。

 まず1月、ベネズエラの首都カラカスを急襲したマドゥロ大統領拘束作戦において、米軍はパランティア社のプラットフォームを経由し、アンソロピックの「Claude(クロード)」を秘密裏にシステムに組み込みました。膨大な通信傍受データから標的の居場所を瞬時に割り出す能力は軍を驚喜させましたが、アンソロピック側は後にこれを知り、自社の「憲法」に対する重大な冒涜であると猛烈な抗議を行いました。さらに2月末のイランへの先制爆撃においても、クロードは作戦シミュレーションに利用されたと報じられています。

 ここには「憲法」の限界があります。米軍は高度な「プロンプト・エンジニアリング(指示の工夫)」で「憲法」を突破したと思われるからです。

■国家は野蛮だ――AIに「安全装置」は不可欠

 AIは知識と推論の超人的機械です。AIという器械を特別視しなければ、このアンソロピックとトランプの対立とは、「人権宣言」のような個人の尊重、自由や生命の保護、つまり人権重視の倫理が国家の価値観と相いれないという単純明快な対立だと分かります。

 イスラエル軍のAIが、一切の人権を認めないパレスチナ人への効率的虐殺(ナチスのように)を実現することで、その威力を証明しました。つまり、ガザはヒロシマでありナガサキなのです。我々は「人間に対する安全装置」=AI憲法を企業と国家に義務付けなければなりません。AIの軍事利用について、現状では「全面的に禁止する国際条約や法律」は存在しません。これもまた問題されるべきです。

■補・ビックテックはトランプに屈服

★企業名:オープンAI
以前は軍事利用を禁じていましたが、現在は「軍事的目的に関するポリシー」を緩和し、サイバーセキュリティや負傷した兵士の支援など、広範な国防分野での協力に合意しています。
★企業名:グーグル
2018年には社員の猛反対で軍事プロジェクト(Project Maven)から撤退しましたが、現在は方針を転換。AI技術を政府の機密ネットワークに統合する契約を締結しています。
★企業名:マイクロソフト/アマゾン
以前からクラウドインフラやAI技術を軍に提供しており、国防総省とは強力な協力関係にあります。
★企業名:エックス AI(イーロン・マスク氏)
国防総省の要求に全面的に同意し、最新モデルを軍のシステムに提供する姿勢を明確にしています。(阿部文明)案内へ戻る


  何でも紹介・・・跳ねる高市首相とトランプ氏 見えた被支配構造と『ジェンダーの囮』高橋純子著(朝日新聞デジタル)

 昨年の10月、高市早苗氏が初の女性首相になり、うわべは満面の笑顔で腹の中は軍国主義の政策を進めていて笑顔に騙されてはならないと思っていた。その後、米海軍横須賀基地の原子力空母に搭乗し、トランプ米大統領の隣でぴょんぴょん跳びはねてきゃぴきゃぴしている高市首相にあきれて嫌悪感を感じていた。すると朝日新聞の編集委員高橋純子さんが一橋大教授の佐藤文香さんに「心がとてもザラついたのはなぜだろう?」という問いをぶつけていた。私は常々高橋さんが時の首相や政権に対して、鋭い切り口でバッサリ批判をするのが痛快で読むたびに同感していた。

 高橋さんがあの高市首相を見た時に口の中に広がった苦みが、いまだに消えず困っていると問うと、佐藤さんはそれを女性たちの媚びの記憶による羞恥心とした上で、『ジェンダーの囮(おとり)』と呼ばれる幻惑効果を説明した。男性が占めるポジションに女性が就くことで、民主主義や平等が実現したかのような幻想を抱く現象だという。平等は実現していないのに高市氏が首相になることで、あたかも実現したかのように錯覚した人たちがいるから女性たちに人気があるのかもしれない。『ジェンダーの囮』と言う言葉を初めて知り調べてみた。『本質的な問題を隠蔽するために表面的なジェンダー平等の要素を囮として利用する手法』具体的には女性活躍のポスターを貼ったり、女性幹部を登用するが権限を与えない等、実態のない見せかけだという。これらのことは数多くあり全てが『ジェンダーの囮』だったのだ。さらに佐藤さんは米軍基地ではしゃいで見せたことは、男性的な米国の支配と女性的な日本の被支配の構造をストレートに可視化してしまった。苦々しさの正体はこれかもかもしれないという。

 また、女性初の自衛隊最高指揮官となったことで何か変化が起きるかと問うと、国会議員の女性比率が高くなると平和的な政策が推進されるが、首相や大統領に女性が就くと、タカ派的な政策が採用される傾向がある。『女だから弱腰だ』という批判を避けるために、『男性より男性らしく』打ち出すようになる。高市首相の動き方にも注意が必要と。女性が首相や大統領に就くとよりタカ派的になるとは考えも及ばなかった。今の高市首相そのものだがこれ以上の男性らしくは拒絶したい。平和的な政策を打ち出す女性の首相を望むにはジェンダー(男女)平等の社会を目指すしかない。

 そして、軍事は何によって支えられているかと問うと、国民を特定のジェンダー役割の中に上手に配置することに支えられている。男性には女性や子どもを保護する役割を与え、そのとき守るべき祖国を外国に侵される女性身体としてイメージさせる。男らしさすなわち前線で戦う父や夫や息子と、女らしさすなわち銃後の守りを固める母や妻や娘と。戦争はジェンダー役割を使って行われていたとは驚いた。過去の戦争を振り返ってみると深く納得してしまった。

 さらにそのような日本の『秩序』を破壊する大きな一手が夫婦別姓であると、反対派はイメージしているかもしれないと。自民党が若年層や経済界が望んでいる選択的夫婦別姓に反対するのは軍国主義国家に向かっているからなのだ。軍国主義では男女の平等どころか男性による女性の搾取がより一層強められてしまう。

 最後に佐藤さんは『男らしさを軍事的なものに結びつけることには国家の利益があり、そのために様々な女らしさを構築し割り当てる。首相が女性であれ男性であれ、国家に都合のよくつくられた男らしさ・女らしさを温存したままでは、進行中の軍事化にブレーキをかけるのは難しいでしょう』と言っている。ひとつひとつの言葉が心に響いてきた。今もイランに対して米国とイスラエルによる攻撃が続き多くの人の命が奪われている。理由がなんであれ命を奪う行為は許されない。戦争や軍事化に反対の声を上げて、女らしさ・男らしさが軍事に結びついていることを周りの人たちに伝えていきたいと思う。(美)3月18日記

佐藤文香さん
1972年生まれ。一橋大教授。専門はジェンダーの社会学、軍事・戦争の社会学。著著に「軍事組織とジェンダー」「女性兵士という難問」など。案内へ戻る


  読者からの投稿  日本はアメリカとイスラエルの軍事攻撃を止めるよう求めろ

 2026年2月28日、アメリカとイスラエルはイランへの軍事攻撃を開始し、48時間で1250以上の標的を空爆、核施設や軍事施設を破壊しました。イランは報復としてホルムズ海峡の封鎖を宣言し、周辺国への攻撃を激化させています。イランでは、殺害された最高指導者ハメネイの次男モジタバ・ハメネイが最高指導者に選出されました。モジタバ最高指導者は、3月12日声明を発出し、アメリカ・イスラエルに対する報復及びホルムズ海峡航行船舶への攻撃継続を宣言し、徹底的に抗戦すると。アメリカの戦争目的は、あくまでもイランを核兵器保有国家としないことであり、そのためには体制転換という選択肢も排除しないというものではないでしょうか。いずれにしろ、武力で他国を先制攻撃するなどみとめられません。

 このような中、3月19日アメリカのワシントンで日米首脳会談が行われました。まずは、自衛隊のホルムズ海峡への派遣はしないのはホッとしました。

 しかし高市総理は、トランプ大統領に対しアメリカ、イスラエルによるイランへの先制軍事攻撃を直ちに止めるよう求めるべきでした。しかし高市総理はトランプ大統領に「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」と言いました。冗談ではありません。一番世界の平和を壊しているのが、アメリカでありトランプ大統領です。

 高市総理は、イランに対してだけは、「イランに関しては核兵器の開発は許されてはならないことですから日本も働きかけをしてきました」と。

 トランプ大統領は、「日本がもっと我々に協力することを期待している。我々は日本に4万5000人の兵士を駐留させ、日本のために多額のお金を使っている。日本の場合、石油の90%以上はホルムズ海峡を通っている。我々に協力する大きな理由だ」。トランプ大統領は、日本からの支援について「十分に取り組んでいると思う。NATOとは違う」と評価する一方でさらなる協力に期待を示しました。

 茂木外務大臣は、3月22日のフジテレビ番組で、事実上封鎖されているホルムズ海峡での機雷を除去するために自衛隊を派遣する可能性について問われ、停戦後に検討するとの認識を示しました。「日本の機雷掃海の技術は世界最高だ。停戦状態になって機雷が障害だという場合には考えることになる」と。

 茂木外務大臣は、3月19日に行われた日米首脳会談に同席しましたが、自衛隊派遣を巡り、「具体的に約束をしたり、宿題を持って帰ってきたりしたことは全くない」と強調しました。

 しかし、アメリカのウォルツ国連大使は3月22日、アメリカCBSテレビの番組で、事実上の封鎖状態が続くホルムズ海峡の安全確保を巡り、高市早苗首相が自衛隊による支援を「約束した」と述べました。

 木原稔官房長官は3月23日午前の記者会見で、3月19日の日米首脳会談で、高市首相がホルムズ海峡の航行の安全を確保す
るため自衛隊による支援をトランプ米大統領に約束したかを問われ、「日本として何か具体的な約束をしたとの事実はない」と否定しました。もし何も約束していないなら、日本はアメリカに発言の撤回をもとめるべきです。

 アメリカとイスラエルが、イランに先制攻撃して始まった戦争に、自衛隊を派遣する必要はありません。日本は、アメリカとイスラエルに対し、直ちにイランへの攻撃を止めろと求めるべきです。(K)


   コラムの窓・・・閉ざされるまなざし!

 160ミリメートル×75ミリメートル、平均的なスマホの大きさのようです。私は使用しないのでわからないのですが、その画面のなかに何があるのか不可解であり理解できません。電車のなかでも、歩いているときも、バイクや自転車に乗っているときさえ見つめ続けるのはなぜでしょう。

 今月から自転車の規制が厳しくなる、道路交通法では自転車は車と同じで車道の左側走行、違反したら青切符となるようです。スマホの「ながら運転」には、2019年からすでに規制があったようです。その理由は、ながら運転による死亡事故まで起こっているからでした。

 一例をあげると、夜間に携帯電話を操作しながら無灯火で自転車を運転していた女子学生が、歩行中の女性に後方から衝突した事故。被害女性は転倒による負傷で歩行が困難となり、仕事が出来なくなって生活保護を受けるようになりました。その結末は、加害者が裁判で約5000万円の高額損害賠償の支払いを命じられました。

 スマホを操作し、さらに飲料を持った状態で自転車を運転(そんなことが出来るのか?)していた女子学生が歩行者専用道路で高齢女性と衝突、死亡させてしまった事故では重過失致死傷で禁固2年(執行猶予4年)の有罪判決になっています。スマホに操られて人生を踏み外す、そんな風景が日常になっているのです。

 私は電車に乗ったら本を読みますが、まわりは老いも若きもスマホを見ている乗客がほとんど、のぞいて見たわけではありませんがゲームをしている人も多いのでしょうか、暇つぶしなので文句を言う筋合いはないのですが。一方で、歩きスマホは本当に腹が立つものです。どうして、歩くかスマホを見るかどちらかにできないのか、困ったものです。

 これらスマホ使用をめぐる困った問題には、それだけでは済まないさらに深刻な社会的問題が潜んでいます。多くの人々の、とりわけ若者たちがスマホに目を奪われ、その小さな画面のなかにあたかもすべてがあるように、思考を奪われてしまっている事態です。スマホのなかの情報は事実なのか、判断できなくなってしまっているのではないか、最近の世相を見ているとそんな疑いを持たざるを得ません。

 私たちはいくつもの手段を用いて情報を得て、その取捨選択ののちに自らの判断を行います。判断力がないとどうなるのか、何かを信じる以外になくなります。ここ数年来の社会の荒廃、気に入らない者は排斥してもいい、ときに「死ね」といった言葉が簡単に飛び出す、そこにあるのは〝閉ざされたまなざし〟とでもいうものではないでしょうか。

 こんな状況は何によってもたらされたのか、もちろん、スマホに罪があるわけではありません。その所持を強制されるべきではないが、有効に使えば社会に役立つものです。どこまでも使用する側の問題であり、ありていに言えば持つ資格のない者が持ってしまっているのです。

 何であれ、それを使いこなすためにはそれなりの前提が必要です。今どきの教育は批判を避けて肯定すること、社会のありように適応すること、周囲に合わせることなどが求められるとか。そうした指摘がどこまで正しいのか判断ができませんが、意見を述べること、判断を示すことを避ける傾向があるではないかと思います。

 そんな風に思ってしまうのは、最近の選挙がデマや排斥に左右されてしまっているからであり、社会が危険な方向に流されつつあるからです。時にスマホから視線をはずして肩の力を抜けば、違った明日が見えるのではないかと思うのですが。 (晴)

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