ワーカーズ678号 (2026/5/1)
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日本はアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃を止めるよう求めろ!
2026年2月28日、アメリカとイスラエルによるイランへの大規模な武力行使が開始されました。その直後、イラン南部ホルモズガーン州ミナーブ(Minab)の女子小学校にミサイルが直撃しました。授業中だった校舎は瓦礫と化し、150人から160人以上もの生徒と教師が犠牲となりました。国連人権理事会が設置した「イラン・イスラム共和国に関する国際独立事実調査団」によれば、その大多数は7歳から12歳の少女たちだったといいます。この悲劇は、「付随的被害」という言葉で片付けられてよいはずもありません。そこに確かにあった日常が、突如として瓦礫と化したのです。今回の件は、イランを先制攻撃した、アメリカとイスラエルが一方的に悪いです。
2026年4月現在、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は進行中で、4月7日の停戦合意は11日に事実上決裂し、緊張が再燃しています。トランプ大統領はホルムズ海峡の海上交通を軍事的に制圧する「逆封鎖」を方針化し、イラン革命防衛隊は対抗して再封鎖を主張するなど、不透明な状況が続いています。トランプ米大統領は4月19日、ホルムズ海峡東側のオマーン湾で、アメリカによる海上封鎖を突破しようとしたイラン船籍の貨物船を攻撃して拿捕(だほ)したと、自身のSNSで明らかにしました。「米海軍の軍艦が貨物船の機関室に穴を開けて進行を阻止した」としています。
これに対し、イランの国営放送局プレスTVは、イラン側が周辺の米軍艦艇に対してドローン(無人機)で報復攻撃したと主張しました。
トランプ氏はこの投稿で、米海軍がイラン船籍の貨物船に停止するよう警告を発したが、「イラン人乗組員が無視した」と説明しました。「船は完全に我々の管理下にあり、船内の状況を確認中だ」としています。
アメリカとイランの2度目の協議が開催されるかどうか不透明なままです。ホルムズ海峡の双方による封鎖合戦が続いています。
日本への影響は、 原油価格の長期的な高騰により、日本は物価高と景気悪化が同時進行する「スタグフレーション」の懸念に直面しています。石油製品の原料となる価格が高騰し、物流や製造業に「経験のない」値上げの波が押し寄せています。イランによるホルムズ海峡の封鎖リスクが意識され、日本郵船が一時航行を取りやめるなど、物流に影響が出ています。
このような中日本政府は、原油価格高騰を受け、ガソリン補助金などの対応を検討しています。この軍事的な緊張が長期化した場合、日本のエネルギー安定供給に深刻な影を落とす可能性が指摘されています。
日本が一番にすることは、アメリカとイスラエルに対し、イランへの攻撃を止めるよう求めることです。気に入らない国だといって攻撃するなど許されるはずがありません。
私たちも、今できることをやるしかありません。(河野)
強くなるのは国家・政府だけ――危険な〝国論二分の大胆な政策〟――
高市首相が年度内成立を強行しようとした26年度予算が、4月7日に成立した。4月以降の後半国会でのテーマは、消費減税など、個別案件の是非に移った。
なかでも高市政権が進めようとしているのが、〝国論を二分する大胆な政策〟だ。が、そこで掲げるテーマは、いずれも生身の生活者ではなく、国民を統治対象とする国家・政府の機能を強化するものばかりだ。
SNSなどではまだ高い支持を受けている高市政権だが、〝統治される国民〟として喜んでばかりでいいのだろうか。(4月21日)
◆〝国家の強化〟案件とスケジュール
先の衆院選。高市首相は「強い経済」「強い日本」を掲げて圧勝した。選挙戦では消費減税など、有権者受けするスローガンを押し出していた。が、選挙で圧勝した後は、消費減税は給付付き税額控除などを議論する「国民会議」に丸投げ。代わりに〝国論を二分する政策〟ばかり前面に押し出している。
現にこの4月21日には、武器(防衛装備品)輸出三原則での救難・輸送など5類型に限るとした制約の撤廃を決めるなど、足早に動き出している。象徴的なのは、内閣に国家情報会議と国家情報局を設置し、国家のインテリジェンス機能を強化する案件だ。
その他にも、昨年の自維連立合意書で掲げられたテーマについても、具体的に動き出しているのが現実だ。それらの一覧表を示せば、別表のとおりだ。
――別表―― ――〝国論を二分する政策〟のスケジュール――
4月
・武器輸出の目的を救難・輸送・警戒・監視・掃海に限定する「5類型」を撤廃、殺傷能力がある武器の輸出を全面的に解禁する
・防衛費の「GDP比2%超」を含む安保関連三文書の改訂に向けた有識者会議の議論を開始
6月
・2年間の食料品の消費税ゼロや給付金付き税額控除などを議論する「国民会議」の中間とりまとめ
7月
・首相がトップの「国家情報会議」や実務を担う「国家情報局」を創設する関連法を会期末の7月17日までの成立をめざす
・スパイ防止法制や対外情報庁の創設に向け、有識者会議で議論開始
・食料品の消費税ゼロを実現するための法案を臨時国会への提案をめざす
12月頃
・年内にも安保関連三文書を改訂へ
◆矛先は国民監視へ
これら、高市首相がもくろむ〝国論を二分する政策〟のそれぞれについて、別途具体的に取り上げていく必要があるが、ここでは国家情報会議・国家情報局の設置について考えてみたい。
すでに触れたように〈国家=政府のインテリジェンス機能の強化〉は、当該機関としては、内閣に国家情報会議を設置し、その事務局機能(=実務機関)として内閣情報調査室を改組・格上げして国家情報局を設置する、というものだ。すでに4月10日に衆院で審議が始まっている。
その国家情報局、これまで各省庁ごとに必要と思われる情報を集めてきたが、今後はインテリジェンスに関わるものは国家情報局が統合して収集・運用することになる。
〝インテリジェンス〟というのは、政府の用語法では「外交や安全保障に関する情報」を指す。が、広く捉える〝インテリジェンス〟の解釈では「意思決定のための情報」であり、外交や安全保障のみならず「国内秩序、国内治安での意思決定のための情報」も含む。だから、実質的には国家情報会議・同情報局の情報の収集・分析対象は、「外交や安全保障」というよりも「国内秩序・国内治安」に力点が置かれることになる。安全保障に関わる情報というなら、むしろ敵対国など、対外情報庁の役割のハズだ。
それはともかく、国家情報局が収集・分析する情報は、具体的には、防衛省、警察庁、外務省、公安調査庁等が集める情報が中心となるが、現実にはそれにとどまらない範囲の情報も収集対象となる場合もある。
政府は、表向きには政府の公式的な解釈を前提として、例えば、個人や法人の税を所管する国税庁、あるいは医療費や年金などを所管する厚労省、それに電話やメールなど通信を所管する総務省なども様々な情報を所管している。それらも当然のごとく対象にされる可能性がある。
これまでは、それらの情報を、必要がある場合に内閣情報調査室が各省庁の事務次官級の担当者と調整して収集していた。が、あくまで情報の管轄権は各省庁にあり、内閣情報調査室に上げない情報も少なくないという。
今回の首相をトップとする国家情報会議・同情報局の設置によって、その機関は統合調整権を付与された、他の省庁と横並びというより、頭を一つ越えた存在になる。というのも、国家情報会議は首相自身がトップで各大臣がメンバーだ。現状では、閣議以外に総理を直接のトップとする省庁は存在しないからだ。それだけ国家情報会議・情報局は、強大な権限を持つことになる。
◆丸裸にされる個人情報
格上げされた国家情報局が収集する情報は、先に挙げたように様々なものがある。具体的に身近なもの一部取り上げれば、警察情報とネット関連情報だ。
警察情報に関わるものとして、各種監視カメラがある。主な交差点には警察署が運用する交通監視カメラが設置され、高速道路を走れば至る所にスピード計測カメラと並んで監視カメラが設置されている。車のナンバーをコンピューターに入力すると、何日の何時に、誰が所有する車が、どの地点を通行しているか、たちどころに判明する。
車の側もGPS・ナビ・サービスシステムで常時ネットに接続されるようになった。その位置情報からも、どの車がいつ、どこを走っているか、すぐ分かる。
各家庭に設置された個人の防犯カメラや、セキュリティ会社が提供する個人宅見守りシステムも同じだ。各家庭に通信・映像機器を設置じての常時監視システムなどを通じて集められる個人情報もある。
ネット情報も同じだ。スマホの位置情報で、サービス提供側は誰がいつどこにいるか、すぐ分かる。また、誰がどんな書籍や物品を通販で購入したか、パソコンやスマホでどんな言葉を検索したか、どんなメールをやり取りしているか、アカウントと結合すればすぐ分かる。現在は、裁判所の承認が無ければアカウントは開示されないが、それらの情報は、各省庁の直属の上級機関となる国家情報局が指示すれば、収集は可能だ。
これらの個人情報をひとまとめにすれば(プロファイリング)、個々人の情報は丸裸にされ、住んでいるところも含めてそれが国家に把握・管理されることになる。それらの情報が適正に管理されるならまだいいが、国家とは、そんな存在ではないからこそ心配になる。
◆守り、強化されるのは国家・政府
現に、警察などによって非合法で不正に個人情報を集められていたケースがあった。古くは、1986年の共産党幹部宅への盗聴事件だ。100メートル離れたアパートで警察官が電話の盗聴をしていたケースだ。
この事件では、当初、所轄警察署が捜査を拒否し、その間に証拠隠滅を図っていた疑いが持たれていた。さらにこの事件では、調査の過程で、公安警察によるコードネーム「サクラ」という各種非合法工作活動を統括する部署の存在が明らかにされた。
他にもある。自衛隊の情報保全隊が、2007年に自衛隊のイラク派遣に反対していた市民団体や政党など、全国289もの団体・個人の発言内容や規模などを記録・収集し、監視対象にしていた、という事例もあった。
こうした過去の事例もある中、政府は今回の国家情報会議と同・情報局の活動について、まだ詳しい説明をしていない。また、情報機関の活動に関する国会の関与も否定している。国民の権利・義務に直接関わるものではないからだ、という。
国家情報局などによる〝重要情報活動〟は、単に外交・安保に関わる情報の収集・分析活動に限ったものではない。今回の情報会議・局の設置は、今後浮上するであろうスパイ防止法(↓国家機密法)制定に直接接続するものであり、加えて言えば、戦前に猛威をふるったあの治安維持法を呼び込みかねないものだ。現に、米国やイスラエルが実施している通信傍受、いわゆる盗聴について、日本でも〝行政傍受〟を可能とする法案の整備を求める声が政府内にあるという。まったく、権限と組織を強化・拡大するのは国家と政府で、個人と国民は監視・取り締まり対象でしかない。安部~高市政権による戦前回帰の逆回転は、止まる気配もない。(廣)
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高市政権の〝国論を二分する政策〟
《武器輸出の全面解禁》
武器(防衛装備品)輸出に関しては、これまで武器輸出三原則の運用指針で、救難・輸送など5類型に限るとの制約を設定してきた。が、実際にはこれまでも順次拡大解釈されてきたし、直近でも共同開発であれば、武器・兵器(戦闘艦や戦闘機も)輸出は可能だと例外扱いし、なし崩しで拡げられてきた。今回は、どんな武器・兵器であっても、戦闘状態にある国に対しても、原則、全面解禁するものになっている。
政府や推進派は、〝同志国〟の軍事力が強化されれば日本の安全も強化される、等としているが、実際は、武力対立を煽るだけだし、日本の〝平和国家〟としての外交資産も大きく毀損する。しかも、チェックすべき国会には、事後通告だけだという。まるで国会は政府の下請け扱いだ。
《安保関連三文書の前倒し改定》
防衛費の対GDP比2%超への増大や、高市首相の意向だという非核三原則の「持たず、作らず、持ち込ませず」の「持ち込ませず」をなくして核配備も可能とする〝二原則化〟も視野に。
《自衛隊の「階級」「服制」「武器名」などの(改訂=国際標準化)》
「二等兵・中尉・大将」や「駆逐艦」「戦闘爆撃機」、それに「陸軍・海軍」など。
《国旗損壊罪の新設》
国旗が象徴する国家への忠誠心、国旗を政権を象徴するものとして政権への忠誠心を呼び込むツールとすること。今国会での実現をめざすとして、すでに3月31日にはプロジェクトチームの初会合が開かれている。
《皇室典範の改定》
象徴天皇制における皇統と男系男子による皇位継承を維持するというもの。
皇室制度存続のため、女性皇族が婚姻後も皇室に残ること、旧宮家の男系男子の養子縁組による皇室への復帰などを見込んでいる。
国家に代わる天皇・皇室への崇敬・尊敬を、国家・政府への従属にすり替える制度としての天皇制・皇室制の維持が目的。ただし、男系男子による皇位継承は、現実的には極めて困難になっている。
《憲法改定》
憲法改定は、これまで保守派の象徴的な課題であり続けてきた。たとえば、高市首相のよりどころとされる安倍首相は改憲草案も出し、改憲へのアピールなども重ねてきた。昨年の自維連立合意でも、「9条改定」と「両党協議会」の設置を決めている。具体的な改訂内容は、緊急事態条項(↓戒厳令)の創設、それに戦力の保持と交戦権を否定する9条2項の削除と2項に「自衛隊」か「国防軍」の保持を明記することが重点。
《その他、旧姓の通称使用の拡大、対外情報庁(日本版CIA)の創設、スパイ防止法の制定など》
今後大きな争点となるであろう「スパイ防止法」については、今年夏にも有識者会議を設置する方向で調整中だとのこと、次の(臨時)国会以降に政府法案として提出予定だという。〝日本版CIA〟の「対外情報庁」(仮称)創設は27年度末までという日程。(廣)
米・イラン権力者たちの身勝手な戦争継続――国家対立と人民の苦痛
今年2月末、米国とイスラエルが「協議中」にもかかわらずイランへの先制空爆を行ったことが事態の発端である。イランは報復としてホルムズ海峡の支配を強化し、世界の石油供給の約2割を担うこの要衝はほぼ閉鎖状態となった。米国は3月、核能力解体や海峡開放などを含む15項目の和平案を提示し、イランも対案を出したが、4月12日のイスラマバード協議は決裂。ドナルド・トランプは「逆封鎖」を宣言し、緊張は一段と高まっている。
★なぜイランは妥協しないのか。その核心は、革命防衛隊(IRGC)にとって最優先が「国民の利益」ではなく「体制維持」にある点だ。昨年以降、国内では蜂起寸前の不満が蓄積していたが、米・イスラエルの攻撃と最高指導者アリー・ハーメネイーの殺害は、「復讐戦」という人民動員の御旗を彼らに与えた。反イスラム体制運動の一部は反米へ転化され、体制はむしろ一時的に安定した。外部からの攻撃が独裁体制を補強するという逆転が生じたのである。
この状況下で、戦争は体制維持の有効な手段となる。弾圧を強化しつつ「反米」「聖戦」を掲げれば、国民の苦痛を抑え込みながら支配を維持できる。さらに海峡支配は通行料という新たな収入源も生み、革命防衛隊にとって停戦は政治的にも経済的にも必ずしも火急の目標ではない。
★一方、トランプの計算もまた権力維持に根ざしている。当初は短期の「限定戦争」で勝利を演出し――内政の失敗や批判を覆い隠し――選挙に結びつける構想だった。しかし海峡封鎖はエネルギー価格を高騰させ、米国内の生活を直撃した。「王様はいらない」「トランプを止めろ」という抗議運動は拡大し、政権は逆に追い込まれている。この中で、戦争継続を口実に選挙延期を模索する可能性すら浮上してきた。トランプにしても戦争は権力維持の手段であり、時に民主主義そのものを停止させる道具にもなり得る。
★さらに危険なのは偶発的エスカレーションである。米海軍と革命防衛隊の艦艇が至近距離で対峙する状況では、判断ミスや通信不全、あるいは現場の独断が全面戦争の引き金となりかねない。指導者が「管理可能」と考えても、現場では容易に制御を失う。
国際社会も有効な手を打てていない。英国主導の多国間協議は続くが、軍事介入には各国が否定的であり、中国・ロシアも制裁強化に反対する中、統一的対応は困難である。会議の積み重ねは、むしろ国際政治の限界を示している。
★しかし最も重要なのは、この戦争の下で苦しむ人民の視点である。イランでは長年の抑圧と経済危機に苦しむ市民が存在し、戦争はその生活をさらに破壊している。反米機運は一時的効果にすぎず、根本的な不満は消えていない。米国でもまた、物価高騰と終わらない戦争への怒りが街頭にあふれ、反戦・反政権の運動が広がっている。
国家と軍事と資本や支配者たちの論理が戦争を継続させる一方で、それに苦しむ人々は別の現実を生きている。歴史が示す通り、戦争を終わらせる力は最終的にその犠牲を強いられる側から生まれる。イランの街頭で、米国の広場で声を上げる人々の存在こそが、この危機のもう一つの焦点である。問題を考える上で必要なのは、指導者の戦略だけでなく、そこに生きる人々の苦痛と抵抗に目を向けることだ。マスコミや「専門家」の大半には苦言を言いたい。(山崎竜)
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軍事経済の非生産性と国民の窮乏化 マルクス経済学とレント論から高市経済を切る
現在、世界各国で軍事の拡大が進んでいます。日本においても、高市政権は、防衛・宇宙・半導体といった先端技術分野を統合的に「国家経済の基盤」と位置づけ、米国からの「外圧」も利用しつつ大規模な国費を投じるビジョンを示しています。この政策により、安全保障の強化と、製造業の再興を目指すとか。
しかしこの方向性は、東アジアの軍拡競争をさらに刺激し緊張を増幅するばかりではなく、経済学的に見て根本的な誤りを含んでいます。マルクスの労働価値説と再生産論、そして現代のレント資本主義論の観点から、その構造的問題を明らかにしたいと思います。
■軍事経済は縮小再生産指向で社会の重荷
マルクスは社会的総資本の再生産を二つの部門に分けて分析しました。第一部門は機械・原料・エネルギーなど生産手段を生産する部門であり、第二部門は労働者と資本家が消費する消費財を生産する部門です。この二部門が一定の比率で交換されることで、社会的再生産の循環が維持されます。
ところが軍需産業はこのどちらにも属しません(だからマルクスは初めから外していたのです)。兵器・弾薬・軍艦・戦闘機は生産手段でも消費財でもなく、再生産過程に還流しない純粋な最終消費財です。しかも兵器は通常の消費財と異なり、労働力の再生産にも寄与しません。軍事財に投入された労働力・原材料・資本設備が生み出す価値は、例えば爆弾は爆発し消耗しあるいは死蔵されることで再生産の回路に何も返さず、社会的に消滅します。これが軍事経済の再生産論的な本質です。イラン戦争でもこの途方もない浪費を見せつけられます。高価な半導体の塊である10億円のミサイルは爆発しても何も造りません。橋を爆破すればイラン社会に打撃を与えても米国国民に何物ももたらしません。だから米国民も戦争による浪費に拒否反応を起こします。
労働価値説の観点からさらに問題を掘り下げると、軍事支出の財源は税収と国債、すなわち社会全体が生み出した剰余価値の移転によって賄われています。軍需企業が国家から受け取る利益は、他の生産的部門等が受け取りうる剰余価値を社会的に収奪したものにほかなりません。軍事部門が拡大すればするほどレント収入は増大し、社会全体の平均利潤率は低下する方向に向かい生産的部門はもちろんサービス、教育、医療福祉部門に配分される剰余価値の総量は圧縮されます。一国経済において軍事部門の比率が一定規模を超えれば、これは経済の再生産能力を構造的に損なう深刻な問題となります。旧ソ連が国内総生産の15?20%を軍事に投じ続けた結果、消費財部門と生産財部門の双方が慢性的資源不足に陥り、経済の内側から崩壊していった歴史は、この論理の極端な証明です。
■軍需企業のレント収奪による大衆窮乏化
次に、現代のレント資本主義論の観点から軍事経済を見ると、問題は簡単明瞭になります。レントとは、生産的活動による価値創出ではなく、制度的地位や排他的権利の保有によって継続的に得られる収益のことです(国家による制度の物象化=固定化がレント発生の前提となります)。軍需産業は競争的市場の外側に置かれ、国家との長期契約という制度的保護のもとで安定的な超過利潤を享受します。これはまさに軍事レントと呼ぶべき構造です。軍需企業は「脅威が存在」し続けることで収益が保証されるため、平和の実現よりも脅威の維持・拡大に制度的インセンティブを持ちます。退役軍人の天下り、ロビー活動、御用シンクタンクによる安全保障リスクの誇張という回路を通じて、軍事的需要は政治的に生産・更新され続けます。国家はレントの配分装置として機能し、民主的統制はこの過程から実質的に排除されていきます。つまり軍事レントの発生と増大は、民主主義の形骸化と深く結びつくことが容易に洞察されます。
「軍事化で経済成長を」という高市首相の主張は、軍事「ケインズ主義」の論理を装っています。確かに軍事支出は短期的な需要創出効果を持ちます。しかし米ブラウン大学「戦争のコスト」プロジェクトの実証研究が繰り返し示すように、同額の支出を教育・医療・インフラに向ければ、雇用創出効果は軍事支出の2倍から3倍に達します。軍事支出は高度に資本集約的・技術集約的であり、一般労働者への所得波及が限定的なのです。軍事ケインズ主義的な外観は、軍事レントの受益者が自らの利益を国民経済全体の利益として見せかけるイデオロギー的機能を果たしているにすぎません。
マルクスが分析した物象化の論理がここでも見事に働いています。「安全保障上の必要性」という物象化された外観のもとに、再生産過程における価値の消滅と特定受益者への所得移転という社会的実態が隠蔽されます。軍事支出は「客観的な脅威への対応」として現れますが、その背後には軍需企業の収益目標と金融資本の投資回収という制度的利害が存在します。
経済の軍事化は成長をもたらしません。それは生産的部門の資源を収奪し、平均利潤率を押し下げ、社会的再生産の能力を長期的に損ないます。平均以上の利益を得るのは軍事レントの受益者に限られ、その負担は広く国民に転嫁されます。現在進行する世界的軍拡と日本の軍事化路線は、経済成長の処方箋ではなく、国民経済の衰退と労働者の零落と民主主義の形骸化を深める道にほかなりません。
■待ち構える増税と医療福祉切り捨て
防衛費の財源確保は、GDP比2%でもすでに大きな負担が予想されており、財源を確保する見込みは定かではありません。政府は法人税への付加税や復興特別所得税の付け替えなどを示していますが、これらで賄える額は限定的(一~二兆円程度)で、多くは一般財源の振り替えに依存する構造です。そのため、社会保障や教育など他分野の予算を圧迫する深刻な懸念があります。さらに、GDP比3.5%規模となれば防衛費は20兆円を超えます。だから高市には「軍需経済で経済成長」などの大嘘が必要なのでしよう。(阿部文明)
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イスラエルの攻撃性・侵略主義の基盤 「軍産国家体」とは何か
2026年2月、米国と共同でイラン攻撃を敢行したイスラエルは、その後も米・イラン停戦合意を尻目にレバノンへの空爆を続けました。ガザでも同じです「停戦には応じる、しかしわれわれの戦争は止まらない」??このスタンスこそ、イスラエルという国家の本質が凝縮されています。なぜイスラエルはここまで戦争をやめられないのか。それは個人の好戦性でも、特定の指導者の暴走(これもあるが)だけではなく、建国以来76年をかけて構築された「軍産国家体」とでも呼ぶべき、軍・国家・経済・精神文化の四位一体構造に根ざしています。
■血塗られた国家建設から「大イスラエル」構想へ
イスラエルは1948年の建国以来、一度も「平和な時代」を経験していません。独立戦争から始まり、スエズ危機、第三次・第四次中東戦争、レバノン侵攻、ガザ攻撃の繰り返し、そして今回のイラン攻撃へと、戦争は例外状態ではなく、常態として続いてきました。ホロコーストの記憶と「再び繰り返してはならない」という切迫感が、建国神話と結びついて「敵に囲まれた小国」という自己像を形成し、軍事的強さこそが存在の証明であるという国民的精神を育んできました。
ロシアには「大スラブ主義」があり、戦前の日本には「大東和共栄圏構想」があったように侵略主義にはこのようなビジョンが伴います。「大イスラエル」構想??ナイル渓谷からユーフラテス川に及ぶ旧約聖書の「約束の地」を実現するという思想??は、ネタニヤフ首相自身が2025年8月のインタビューで「世代を超えた使命」と語ったように、もはやイデオローグ少数派の妄想ではなく、執権勢力の公言した目標となっています。ガザ、ヨルダン川西岸への実効支配の拡大、レバノンへの継続攻撃・占領、そしてイランの体制弱体化??これらは別々の作戦ではなく、「大イスラエル」実現へ向けた一つの連続した戦略的プロジェクトとして読み解くことができます。イスラエルにとってイラクやシリアの国家解体は先例であり、今度はイランの番だという論理です。
■「軍産国家体」の構造
イスラエルの軍事化度は世界平和度指数で世界第1位です。軍事費のGDP比は5.32%で、NATO目標の2倍以上にあたります。しかしこの数字以上に問題なのは、軍事が経済にそして社会に「内部化」されている構造です。
米国では軍需企業ロッキードやレイセオンが政治献金とロビイング及び「回転ドア」を通じて政府の政策に影響を与えます。しかしイスラエルの場合、構造がもっと根深い。ラファエル、IAI(イスラエル航空宇宙産業)は国防省が直接所有・監督する国有企業であり、エルビットは民間上場企業ながら軍との共同開発・共同所有の形態をとり、事実上国家と一体化しています。この三社でイスラエルの防衛生産の七割以上を担っています。国家が主要軍需企業の経営者であり、民間企業もその軌道に深く組み込まれている??米国やEUのように民間企業が政治を『買う』のではなく、国家そのものが軍需産業なのです。
さらに武器輸出がこの構造を強化します。2024年の武器輸出額は過去最高の148億ドルに達し、エルビット、IAI、ラファエルの三社の売上高の七五?八〇%が輸出によるものという、世界的にも異例の構造となっています。イスラエル国防大臣は「この記録はハマス、ヒズボラ、イランへの軍事作戦の直接的な結果だ」と公言しました。つまり戦争は宣伝であり、実戦こそが最高のショールームなのです。日本が自動車輸出に国家的使命をかけるように、イスラエルは武器輸出に国家的使命をかけていますが、決定的に違うのは、武器の場合は「戦争が続くほど商品の信頼性が上がる」という、戦争と商売が共鳴するシステムである点です。これは米国の軍産複合体をはるかに超えた、社会の毛細血管にまで軍事が浸透した構造と言えます。
男女とも18歳から徴兵され、除隊後も年1か月程度の予備役義務が課されるため、軍事技術と経験は社会全体に行き渡ります。ITやサイバーセキュリティ、ドローン技術など、「起業国家」として世界が注目するイスラエルのハイテク産業のほとんどは、軍の精鋭情報部隊8200での研究開発を源流とする軍事技術のスピルオーバー(波及効果)です。民間就職も軍需関連企業が主要な受け皿であり、さらにヒスタドルート(イスラエル労働総同盟)もその蓄積を軍需企業に投資しており、労働者・組合員の雇用・年金や賃金を軍産国家体に組み込むネットワークを形成してきました。「戦争をやめろ」という声が経済的に出にくい構造が生まれています。
■「スーパー・スパルタ」--世界に抗える高度軍事国家建設
こうして見ると、イスラエルの攻撃性・拡張主義の推進力は、少なくとも三つの層から成り立っています。第一に、国家・軍・経済・文化が一体化した「軍産国家」の構造的利益。第二に、戦争継続によって政権と個人の延命を図るネタニヤフの政治的計算。第三に、「大イスラエル」を聖書的使命と信じる宗教的右派のイデオロギー。これら三つが互いを補強し合いながら、ガザ・西岸・レバノン・シリアへの拡張を推し進め、さらにはそれに抵抗するイランを激しく攻撃します。
そして2026年1月、ネタニヤフはさらに踏み込んだ宣言をしました。今後約十年でアメリカの軍事援助を不要にすること、「スーパー・スパルタ」??国際的圧力に抗える高度軍事国家??の建設を国家目標に掲げ、軍・産・国一体の自給体制を目指すと公言したのです。これはイスラエルが国際社会の批判や制裁に対する耐性をさらに高め、より自由に軍事行動をとれる国家へと変貌しようとしていることを意味します。
国際法・国連決議はこれまで数百本のイスラエル非難決議が採択されましたが、米国の拒否権で実効性はほぼゼロでした。国際刑事裁判所がネタニヤフ氏に逮捕状を出しましたが、これも実行力を伴いません。欧州諸国の非難声明は出ても、制裁には踏み出しません。いずれ別稿においてイスラエル体制が抱く亀裂と人々の闘いについて論じましょう。(阿部文明)
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アイヌ先住民否定のパネル展 差別・分断を策する日本会議
札幌市の公共空間「チカホ」(市の管轄)で、アイヌ民族の先住性を否定するパネル展が繰り返し開催された問題は、単なる展示の是非を超え、私たちが抱える差別構造を露呈しました。政府は2019年のアイヌ施策推進法で「アイヌを先住民族とする」と明記し、国際社会でも先住民族の権利保護は既定路線です。しかし、今回の展示では「アイヌは先住民族ではない」「旧土人保護法は優遇政策だった」といったヘイト主張が掲げられ、歴史的事実と法的地位を否定する内容が公共空間に持ち込まれました。これに対し、複数のアイヌ団体は「差別の助長だ」として三月二十七日に1万6708筆の署名を提出し、市に対策を求めています(朝日新聞)。
■アイヌの先住民族性--学術的定説の確認
アイヌが北海道・東北北部の先住民族であることは、現代の学術研究においてほぼ決着のついた問題です。考古学的には、擦文文化からアイヌ文化への移行は人の入れ替わりを伴わない連続的な変容であり、担い手は縄文以来の住民とされています。遺伝学的には、2019年に国立科学博物館・東京大学・金沢大学など七研究機関の合同研究が、現代のアイヌは縄文人の核DNAを約七割受け継いでいる(他にオホーツク文化圏(北方)などと融合して形成)と発表しました。「アイヌは13世紀に北方から侵入した外来民族である」という説は旧来の仮説であり、DNA解析によって完全に否定されています。
また、【先住民族の概念】は人種的起源の問題ではなく、「近代国家成立時に誰がその地に居住していたか」という歴史的・政治的な文脈で規定されるものです。1996年の政府有識者懇談会も、「少なくとも中世末期以降の歴史においてアイヌが北海道に先住していたことは否定できない」と結論づけており、2019年施行のアイヌ施策推進法もアイヌを明文で先住民族と規定しています。
■「理論的支柱」的場光昭の主張
札幌市チカホのパネル展を支えた「理論的支柱」が、北海道在住の医師・的場光昭です。彼の主張は大きく二系統に分かれます。一方では上述の「13世紀渡来説」を援用し、「アイヌは外来者ゆえに先住民族ではない」と主張します。他方では「アイヌ文化は和人文化からの派生にすぎず独自性がない」とも論じています。しかしこの二命題は論理的に相互矛盾しています。「13世紀に北方から来た外来民族」であれば、DNAもその文化も大陸・北方系のものに偏るはずであり、「和人の影響による派生」という説明とは整合しません。この矛盾は、的場の議論が科学的な仮説検証ではなく「先住民族の地位を穢し攻撃する」という結論が先にあり、ためにする言説を場面ごとに使い分けているからです。
■主催団体の正体??日本会議北海道本部と排外主義ネットワーク
パネル展の主催は「アイヌの史実を学ぶ会」ですが、その実態は明確な組織的背景を持っています。同会は2019年アイヌ施策推進法の成立に「危機意識」を持った人々が2020年に立ち上げた団体であり、代表・伊藤昌勝は日本会議北海道本部理事、事務局の西井千鶴子は日本第一党幹部です。日本第一党は在日コリアンへの差別的主張で知られる排外主義政党であり、在特会(在日特権を許さない市民の会)の流れを汲む系譜にあります(だからヘイトの論理がそっくりなのです)。後援は日本会議北海道本部が担いました。すなわちチカホでの展示は、日本会議・日本第一党・在特会系という排外主義ネットワークのそろい踏みでした。
■在日朝鮮人・クルド人差別との構造的共通性
「旧土人保護法は差別ではなく優遇政策だった」という展示の主張は、「在日特権」言説やクルド人に対する「優遇批判」と同一の論法構造を持っています。これは「現代的レイシズム」と呼ばれる手法であり、露骨な民族蔑視を避けながら「被差別者はむしろ優遇されている」「われらこそ逆差別の被害者だ」と反転させることで、当事者の権利主張を無効化し、多数者をアイヌ攻撃にけし掛ける悪質さが特徴です。
ネットではこれに加えてアイヌ運動を「北朝鮮・反日勢力の工作」と結びつける陰謀論が接合されており、「外来の異質な存在が日本の均質な秩序を侵害している」という排除の論理が共通の核として機能しています。こうした言説がチカホという公共空間に何度も持ち込まれたことは、行政が差別的主張を黙認しているかのような印象を社会に与え、歴史的に抑圧されてきた当事者に二重の負荷をかけるものです。
■制度的空白と求められる対応
札幌市は「展示内容は市の認識と異なる」としつつも、差別に該当するかどうかを判断する法的基準が示されていないとして使用拒否を回避しました。これは個別自治体の怠慢ではなく、ヘイトスピーチ解消法が具体的禁止規定を欠く「理念法」にとどまる日本の制度的限界を示しています。
アイヌ先住民族否定は学術的論争ではなく、法的に認定された地位と科学的定説の双方を否定するものであり、差別の再生産につながる言説です。必要なのは、先住民族の文化表現・権利保護に関する統一的な具体基準を国が定め、公共空間での表現に関する判断基準(展示、商業利用、政治的表現との線引きなど)を明示することです。
今回の問題は孤立した事件ではなく、排外主義ネットワークが規制の緩い公共空間を戦略的に利用する動きの一環として捉えるべきものです。(山崎)
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日本国家の法秩序を攪乱する自民党と自衛隊と警察庁
高市早苗の驕り
四月十二日、第九十三回自民党大会が開催された。大会は日本憲政史上最大の勝利の下に開かれ、高市早苗が「時は来た。改憲発議にメドが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と発言する歴史的な大会になった。このように憲法遵守義務がある国会議員でもある高市早苗は、その規定を公然と無視し、その驕りはまさに頂点に達していたのである。
大会ではこれを象徴するかの如く陸上自衛隊中央音楽隊の鶫真衣三等陸曹が「君が代」を斉唱した。自衛隊員による「君が代」の斉唱は、憲法第九条の改正を含む、明確な政治的意図があると言わざるをえない。そもそも自衛隊は、日本国家のものであり自民党の私有物でもないし、また自衛官は自衛隊法第六十一条で選挙投票以外の「政治的行為」を禁じられているので、特定の政党の大会に招かれ歌唱する行為は明確な法律違反である。
一方の自民党はイベント会社を通じて法律違反を無視しての出演依頼の要請、他方の自衛隊は政党からの演奏依頼は断るとのマニュアルを無視してその参加伺いを承認した。
この件が報道されるや、この異常事態について高市早苗は自衛隊法上の問題については「問題ない」とし、小泉進次郎も違反に「当たらない」と否定し、自衛隊の荒井正芳陸上幕僚長も「法令に抵触しないと報告を受けていた」と発言している。何ということだろう。
高市早苗を筆頭にして彼らには日本国家の法秩序を攪乱している、との自覚が欠如している。これは日本国家の危機を象徴するもの、高市早苗の驕りそのものではないのか。
国際法秩序を軽視する自民党と警察庁
この事件の二十日ほど前に、国際法秩序を揺るがす重大事件が惹起していた。昨秋の高市早苗の「台湾有事」発言以降、日中関係は過去最悪の状態となった。中国商務省は、三菱重工業やIHIなど二十の日本企業や団体を対象としたデュアルユース(軍民両用)品目の輸出を禁止するとした。そんな最悪の状況の中、この事件は起きたのである。
日中戦争が泥沼化し、暴支膺懲が叫ばれた昭和前期にも中国大使館乱入などなかった。
三月二十四日、宮崎県の陸上自衛隊えびの駐屯地所属の三等陸尉、村田晃大容疑者が東京都港区にある中国大使館の敷地内に侵入し、建造物侵入容疑で警視庁公安部に逮捕された。この事件は外国大使館を防衛する義務がある警察庁の大失態であるばかりではなく、そもそも国を守るため組織である自衛隊の三等陸尉とはいえ幹部の犯行だったのである。
外交関係に関するウィーン条約では、外交官の身体の不可侵が保障され、受け入れ国の捜査当局に逮捕されない特権が与えられている。大使館の敷地内は、当該国の「領土」である。そこに不法侵入する行為は、国際法の基礎の「内政不干渉の原則」違反だ。相手が中国であるか否かに関わらず、本来はただちに正式に謝罪すべき案件である。
翌日、警察庁は全国の警察に外国公館の関連施設に対する警戒警備の徹底を通達した。
この侵入事件については、小泉進次郎は「法と規律を順守すべき自衛官が、在京中国大使館の敷地内に侵入し、建造物侵入の容疑で逮捕されたことは誠に遺憾」と言っているが、本来なすべき謝罪はしていない。この驚くべき対応は、高市早苗を慮ってのものである。
だが高市早苗が感情的に中国には謝罪できないと考えたとしても、それは結局は国際法の公然たる無視となり、国益を損ねるだけの考えられない最悪の判断といえるだろう。
三月二十四日、中国外務省の報道官は、当然のことながら「新型軍国主義」という表現を交えて「歴史や台湾など中日関係に関わる重大な核心的問題における日本政府の誤った政策の害毒が重い」と日本側の政治責任を追及した。そして中国の国民に対しては、改めて「日本への渡航を控えるよう厳重に注意喚起する」と呼びかけのである。
確かに「日本の右傾化」を国際社会に強調してきた自国の立場を正当化する狙いはあるものの、この抗議には中国の日本に対する現状認識が表明されたものと評価すべきだろう。
警察庁と自衛隊の呆れた不作為
高市早苗の台湾有事発言でにわかに緊張が高まったことで、中国大使館周辺の警視庁の警備は厳重なものになる。文字通り二十四時間体制の警備が引かれた。確かに見た目は物々しかった。だがその警備の実態は、犯罪者から見れば実にゆるゆるのものだったのだ。
三等陸尉の村田容疑者は、犯行前日に休暇を取得し、昼には駐屯地を出て高速バスと新幹線を乗継ぎ、二十三時東京に到着し銀座へ向かい、ドン・キホーテで刃渡り十八センチの刃物を買い、翌日朝まで銀座のネットカフェに滞在した。事件当日はえびの駐屯地を無断欠勤。その後、七時半頃六本木駅に到着し、九時頃までの約一時間、大使館周辺を下見した。大使館へは敷地に隣接するビルから有刺鉄線付きの塀を乗り越えて侵入し、植え込みに身を隠して、大使館職員の姿を認めると自ら“大使に会いたい”と声をかけ、それで職員に身柄を確保され、警視庁へと引き渡された。これがこの事件の経緯である。
このように形ばかりの警備体制を村田容疑者はたった一時間の下見でその不備を見破ったのであり、実際に隣接するビルから侵入することで警視庁の鼻を明かしたのである。
警視庁の不作為には呆れるが、もっと呆れるのは陸上自衛隊えびの駐屯地の無断欠勤に対する対応である。彼らにも緊張感がまったく欠如していたようなのである。
つい最近も、術科学校の卒業日に配属先の護衛艦さみだれへ着隊する予定の男性隊員が着任予定時刻になっても姿を現さず、携帯電話に連絡するも繋がらない状況が続いたので、警察に捜索願が出された。翌朝、寝坊した男性隊員は出勤したものの、規定より十九時間十分遅刻し、本年一月二十二日、減給一ヶ月(十五分の一)の懲戒処分を受けた。
日本陸軍では帰営時間の順守は絶対であった。それは軍律に脱走罪があったためだが、自衛隊でも本来的には規則は厳しい。では今回のえびの駐屯地の場合はどのようなものであったか。これについては何の報道もなく、その問題意識もまったくないようなのである。
中国大使館によれば、この三月から脅迫状や嫌がらせが続いているとのこと。これについて警察庁は呆れるほど誠実な対応はしてこなかった。任務放棄ではないか。
この間の高市早苗や自民党と自衛隊及び警察庁の責任は明白である。彼らは自らの責任を明確化し、しっかりとその責任を取るべきだ。(直木)
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連日過熱報道の南丹事件で隠されたものとは何か
京都府南丹市で小学生が行方不明になり、その後遺体が発見された南丹事件は過剰なまでの異常報道がされた。確かに遺体が発見されるまでは報道の意味があるとしても、その後の報道はまさに週刊誌のような興味本位であり、その扱い・スペース(新聞は紙面量、放送は時間)とも度を越した。その結果、当然ながら重要なニュースの報道が疎かになる。
四月十四日のNHKニュースウォッチ9では、冒頭(トップ扱い)が「南丹事件」で約十一分間(写真右)。次が「りくりゅうペア」の引退表明(天皇・皇后主催の園遊会を含む)約八分間、三番目が「イラン情勢」関連、四番目が海上自衛隊護衛艦の台湾海峡通過、そして五番目にやっと「国家情報会議・情報局設置法案」を巡る衆院内閣委員会だった。
要するに報道とは、今も昔も政府にとって民衆操作のための一手段なのである。
ではこの国家情報会議・情報局設置法案とは何か。その狙いとは一体何なのか。
国家情報会議・情報局設置法案
同設置法案は「スパイ防止法」と一体であり、国民監視・有事体制づくりの路線を敷く重大法案だ。それが二十二日には採決され、衆院を通過しようとしているのである。
同法案は四月二日に衆院本会議で審議入りし、十日から内閣委員会で審議されている。だがその重要性に比べ報道はあまりにも不十分である。なぜか。この期間は、「行方不明」の第一報(三月二十三日)から遺体発見(四月十三日)、容疑者逮捕(四月十六日)とメディアが「南丹事件」の報道に明け暮れていた時期と一致している。
高市早苗は、国民の安全や国益を守るためにインテリジェンス(情報の収集・分析)の司令塔機能の強化が不可欠だとする。要するに二0一五年の安保法制、その後の安保3文書に基づく「戦争する国づくり」の上に、今度は実際に「戦争する人づくり」を狙っていて、米国と一緒に戦う国づくりのベースになる土壌づくりをめざしているのである。
その狙いは何か
戦争の遂行は国民の反対が大きければできない。戦争を容認する雰囲気づくりを進め、戦争に反対するものに冷や水を浴びせ、つるし上げてでも抑え込む必要がある。そのために国家が行う諜報活動で、すべての民衆を監視する体制の強化が法案提出の狙いである。
だから内閣委員会で高市早苗は、「政府の政策に反対するデモそのものが情報活動の対象となることは一般的に想定しがたく、デモや集会に参加しているということのみを理由に普通の市民が調査の対象になることも想定しがたい」と答弁。真実は隠されているのだ。
こんなやり取りが国会で議論されていること自体が実に異常だ。なぜこんな異常な事態が報道されないのか。それもこれも連日過熱報道の南丹事件で隠されているからである。
だがマスメディアが興味本位の過剰報道するのは、重要問題の報道を隠蔽し、結果として時の政権を利するのは、決して今に始まったことではない。私たちは注意しなければ。
実際に日本には日本国憲法体系と日米安全保障条約法体系という対立する二つの法体系が存在する。高市早苗は口先では「法の支配」を掲げながら、国際法違反のイラン攻撃を拡大するトランプ米大統領に物申せない対米追従の姿勢が全世界で一際際立っている。
まさに高市早苗が国家スパイ機関を設置したら実際には何をするかわからない。「プライバシー等を無用に侵害するようなことはありません」との言葉は鴻毛のように軽いのだ。
しかもこの法案は、国家諜報機関が私たちの大切な個人情報や大事な生活の核心部分をスパイしても国会や第三者機関がチェックする仕組みさえない乱暴なものなのである。
私たちは「こんなことが許されますか」と労働者に問い掛けつつ、反対の世論を広げて人権侵害の悪法を阻止しなければならないと考える。ともに闘おう! (直木)
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「再審法改正」のキモは検察権力の規制 冤罪事件の解消を!
日本の刑事司法が、いま歴史的な転換点に立たされています。冤罪被害者が裁判のやり直しを求める「再審」制度の不備を解消するための刑事訴訟法改正案が、2026年4月に大きな局面を迎えました。政府(法務省)が示した改正案に対し、自民党内からは怒号が飛び交うほどの猛反発が起き、さらには法曹界や人権団体が自民党内の推進派議員を強力に後押しするという、異例の展開が生まれています。
■ 救済を阻む二つの壁――「検察抗告」と「証拠不開示」
今回の対立の最大の焦点は、裁判所が一度「再審開始」を認めた際、検察官がその決定に異議を唱える「不服申し立て(抗告)」を禁止するかどうかです。現在の制度では、検察官が抗告を繰り返すことで審理が上級審へと引き継がれ、再審の法廷が開かれるまでに膨大な時間が浪費されます。2026年4月15日、法務省は妥協案として「検察による抗告後の審理期間を1年以内とする努力義務」や「不服申し立て(抗告)理由の厳格化」などを盛り込んだ修正案を提示しました。しかし、自民党内の会議では「努力義務では強制力がなく、骨抜きだ」といった批判が相次ぎ、了承は得られませんでした。
もう一つの大きな問題が、再審請求段階における「証拠開示」のルールが法律上存在しないことです。現行制度では、検察が保有する証拠を再審請求人に開示する義務が法的に定められておらず、無実を証明しうる証拠が検察の手元に留め置かれたまま、請求が退けられるケースが指摘されています。推進派が求める「証拠開示のルール化」は、抗告禁止と並ぶ改正の二本柱となっています。
■ 袴田事件が突きつけた「遅すぎた救済」
「抗告」がどれほど残酷な結末を招くかを示したのが、袴田巌さんの事例です。1966年の事件発生から死刑が確定していた袴田さんに対し、2014年に静岡地裁は「証拠捏造の疑い」を認めて再審開始と釈放を決定しました。しかし、検察側が即座に抗告したことで、そこから最高裁を経て再審開始が確定するまでに約9年もの歳月が費やされました。
2014年当時、釈放された袴田さんは78歳でしたが、再審公判が開かれたのはそれから10年近く後のことでした。2024年9月、静岡地裁はついに無罪判決を言い渡しましたが、その時袴田さんはすでに88歳になっていました。この失われた長い歳月は、まさに検察の抗告による「審理の引き延ばし」の結果です。高齢の被害者にとって、この時間は死を待つにも等しい苦痛であり、司法が救済の手を差し伸べるべき時期を逸してしまったという事実は、今回の法改正を求める最も強い動機となっています。
■ 法曹界・人権団体と「再審法改正推進派議員」の異例の共闘
この状況下で注目すべきは、日本弁護士連合会(日弁連)や「冤罪被害者の会」などの人権団体が、自民党内の「再審法改正を求める議員連盟(稲田朋美氏らが中心)」の見解に賛同し、足並みを揃えている点です。通常、リベラルな色合いの強い弁護士会と、保守本流の自民党議員は多くの政策で対立しますが、再審法改正に関しては「共通の敵」である法務省・検察を前に強力なタッグを組んでいます。なお、この動きは自民党内にとどまらず、公明党や一部野党議員も加わる超党派的な広がりを見せており、「稲田派」という一語では収まりきらない政治連合に発展しつつあります。
日弁連は、推進派が主張する「抗告の全面禁止」と「証拠開示のルール化」を悲願としており、稲田氏らの党内での取り組みを公式に支持しています。稲田氏は「一度下した国家の判断を誤りと認める潔さこそが真の保守だ」という論理で保守層を説得しており、人権団体側は「自分たちの声が届かなかった層に響く言葉を持っている」として、彼女をパートナーと見なしています。
法曹界の学者たちも、法務省が諮問機関を通じて官僚主導で進めようとする「名ばかりの改革」を厳しく批判し、「政治主導の抜本的改正」を支持する緊急声明を出すなど、バックアップを強めています。
なお、検察側が抗告権の維持にこだわる背景には、再審請求の濫用防止や確定判決の安定性確保、捜査実務への影響などと言っていますが「検察の権威に指一本触れるな」という権力固執に原因があります。
■ 国際的な視点と高市政権の決断
この問題は国内にとどまらない文脈も持っています。国連の自由権規約委員会やアムネスティ・インターナショナルなどの国際人権機関は、かねてから日本の再審制度の不備を指摘・勧告しており、現行制度は国際的な人権基準との乖離が著しいと批判されてきました。高市首相が「法の支配」を外交の場でも強調するなか、国内の刑事司法制度がその原則に沿っていないという矛盾は、いっそう際立ちます。
2026年4月15日の会議が怒号のなかで紛糾した事実は、法務省案がもはや通用しない段階に来ていることを示しています。この再審法改正は「国家権力が誤った際に、いかに迅速にそれを正すか」「暴走を止めるか」という、日本の民主主義の質を問う闘いとなっています。(A)
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色鉛筆・・・必要な人に行き届いた介護保険制度を
久しぶりに他県で1人暮らしをする足腰が弱ってきた叔母さんのお手伝いにいきました。
高齢化が進む中で、介護の問題は多くの人にとって身近なものとなっています。しかし実際に介護認定を申請しようとすると、そのハードルの高さに叔母さんのように直面する人が少なくありません。足腰が弱り、日常生活に不安を感じていても、「まだ自分でできる部分がある」と判断され、必要な介護サービスにつながらないケースが多く見られます。
現場では、「歩くのがつらい」「転倒が怖くて外出できない」といった切実な声が上がっています。それでも、認定の基準は厳しく、「要支援にも該当しない」とされてしまえば、公的な支援はほとんど受けられません。その結果、多くの高齢者が無理を重ねながら、自力で生活を続けることを余儀なくされています。
また、家族にとっても負担は重くのしかかります。仕事と介護の両立に悩み、離職を選ばざるを得ないケースもあります。本来であれば、社会全体で支えるべき介護が、個人や家庭の責任に押し戻されている現状は看過できません。
介護保険制度は、「必要な人に必要な支援を届ける」ためにあるはずです。しかし現実には、制度の壁によって支援からこぼれ落ちる人がいることが問題です。状態が悪化してからでなければ支援を受けられないのではなく、予防的な段階から支える仕組みこそ求められています。
安心して年を重ねられる社会とは、無理をしなければ暮らせない社会ではありません。足が弱っても、支え合いながら自分らしく生活できることが大切です。そのためにも、介護認定のあり方を見直し、必要な人に確実に支援が届く仕組みへと改善していくことが求められています。
もちろん「財源問題」が必ず付きまといますが、軍拡止めるだけでも約5兆円の財源が確保されます。どのような社会を目指すのかが問われていると思います。(宮城 弥生)
何でも紹介・・・自・維候補を退けた西宮市長選!
何かとお騒がせの兵庫県、その一角の西宮市で自・維国政与党が全面的に乗り出した市長選挙で、現職の市民派市長(とりあえずそう言っておこう)が3月29日、3選を果たした。自・維候補は6期22年の市議(自民党)の席をなげうって立候補した田中正剛氏、対する石井登志郎市長は前回は維新の増山誠候補を退け、今回は自・維をも退けた。
かつて、野々村竜太郎氏も2度立候補した市長選だが、その甲斐あってめでたくも野々村氏は兵庫県議となった。しかし、政務活動費違法支出が発覚して〝号泣県議〟の名を残して辞職した。石井氏の前任、今村岳司市長は失言で1期で退いている。
そして、増山県議は維新市長誕生の期待に背き倍近い票差で敗退し、県議に復帰したが、斎藤元彦兵庫県知事を支持して悪意ある発言と行動で維新を追われ、今は〝躍動の会〟なる会派を率いて相変わらず恥ずかしい姿をさらしている。こんなふうに振りかえると、西宮市長選挙は社会のひずみを反映してきたといえよう。
さて今回の市長選だが、自民と維新がどれ程なりふり構わず振る舞ったか、その振る舞いこそがもしかしたら石井氏を勝たせたのかもしれない。たかが市長選だが、自・維が看板を掲げて敗北した最初の市長選挙としての意義は強調されるべきだろう。
この点、地元紙は次のように報じている。
「自民党と日本維新の会による連立政権が発足後、両党が相乗りする初の市長選だった。選挙カーの側面には高市早苗総裁と吉村洋文代表の顔写真を貼り、出陣式には吉村代表が『市長が変われば、まちも変わる』と訴えた。自民の県選出の国会議員や県議、市議らも支援に回り、組織戦を展開した」(「3・31「神戸新聞」)
この展開では自・維国政の下請け自治体になってしまう、多くの市民が危機感を持ったとしても不思議はない。前回市長選では維新に市政を明け渡してはならないとばかり、自民までもが石井市長に肩入れしたし、必ずしも石井市政を支持しない(私もそうだが)市民も石井再選に動いた。それだけでは足りそうもなかったが、自・維の候補者の影が薄かったことも勝敗を分けたようだ。
ネットなどでも「誰が候補者かわからない」という声が聞こえてくるし、届けられるビラも維新が前面だったり、高市・吉村ビラだったり、その力に頼り切っているようだった。地元紙も選挙情勢に触れて、「『高市旋風』影響どこまで」「直前にあった衆院選での自民党大勝がどう影響するか、見通せないでいる」(3・2「神戸新聞」)と、それこそが選挙を決めると思われた。私もそう思っていた。
「(田中候補は)立候補に合わせて自民を離れたが、同党から推薦を受ける田中氏の陣営は好機とみる。高市早苗首相と並んだポスターを市内に張り、国との連携をアピールする」(同紙)、高市頼み、吉村頼みだけと言われても仕方がない選挙戦術だった。
わずか655票差で涙をのんだ田中候補は「結果を出さなければいけない中、私の力不足で当選できなかった」と述べたが、なんだか可哀そうになってしまう敗戦の弁はこうだ。
「高市氏や吉村氏の力を借りて当選しようとしているのでは、と誤解されないように訴えてきたが、伝わらなかった」「22年間の市議としての活動不足も感じている。市政に関心を持ってもらえる活動ができなかった」
そう報じた「神戸新聞」(3月31日)は次のようにまとめている。「『ジャンプアップ西宮』をキャッチフレーズに掲げ、財政再建や待機児童対策を訴え続けたが、『市政の刷新』はかなわなかった」と。
ここであげられている財政再建や待機児童対策は、実に石井市政の課題そのものである。人口は48万人を割るのでは思われるが、住みたい街とされ若い層が多いので待機児童問題は一向に解消されない。最近はどこでもあるあるだが、タワーマンション建設とか駅前に民間と手を組んで集客施設をだとか、市政には問題が山積している。
ともあれ、維新による市政簒奪、高市旋風による市政の荒廃はくい止められた。西宮市だけではないこうした小さな勝利の積み上げが、あきらめることなく自治体レベルで自・維との対決を続けている市民へのエールなればさいわいだ。 (折口晴夫)
西宮市長選結果
投票率39・63%(前回41・28%)
石井としろう 無所属 71045票
田中まさたけ 無所属 70390票
畑本 ひでき 無所属 11725票
自民党支援候補が敗れた最近の首長選挙
3月8日 石川県知事選 推薦した現職馳浩氏が、元金沢市長に敗北
3月29日 東京都清瀬市長選 推薦した現職が、共産、社民推薦の、元市議に敗北
4月12日 東京都練馬区長選 推薦した元都議が、無所属新人に敗北
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大阪市廃止・分割=トコーソーに反対です
維新は、過去2回にわたり大阪市廃止・分割=トコーソーの住民投票を行いましたが、いずれも反対多数で否決されています。それでも維新は、来年3度めの住民投票をやろうとしています。
大阪市廃止・分割=トコーソーの「3度目」の住民投票を巡って大阪が揺れています。今年1月、吉村洋文・大阪府知事(日本維新の会代表、大阪維新の会代表)と横山英幸・大阪市長(日本維新の会副代表、大阪維新の会代表代行)が、「出直し選挙をやり大阪都構想3度目の挑戦を訴える」と表明しました。維新の大阪市議団の反対を振り切って辞職、出直し選挙に踏み切りました。2人とも再選されたものの、トコーソーは「大阪市を廃止して特別区に分割する」ものなので、廃止の当事者である維新市議団は「3度目」の住民投票に慎重です。3月に「大阪市内24行政区でタウンミーティングを開き、市民の意見を聞く」と決定、4月5日からタウンミーティングが始まりました。
維新と自民党は3月、首都機能をバックアップする「副首都構想」の法案骨子に合意しました。維新代表大阪府知事の吉村洋文氏は法案成立に伴い、大阪府が副首都になって名称を大阪都に変更する場合、大阪都構想の住民投票を大阪府内全域で実施して、名称変更の是非も同時に問えると主張しています。つまり、大阪市廃止特別区設置と大阪都への名称変更をいっぺんにやろうとしています。投票範囲は大阪都構想の制度案を決める府市の法定協議会で決めるとしています。
トコーソーが実現すると大阪市は廃止され特別区になります。維新の大阪市議団長竹下隆氏は市議団としての決定ではないと前置きしたうえで「特別区設置(の住民投票)は大阪市内の方だけがいいのではないか。(大阪都への)名称変更は別建てで府民でやればいい。大阪市議団のメンバーはみんな同じ意見だと思う」と。過去2回同様、大阪都構想の是非は大阪市民だけに問うべきだとの見解を示しました。
維新の看板政策「大阪都構想」を巡り、維新大阪市議団が4月5日、大阪市城東区でタウンミーティングを開きました。5月7日まで市内全24区で実施する予定です。都構想の制度案を作る法定協議会(法定協)への対応を決める判断材料とする考えですが、市民からは「なぜまた都構想をやるのか」などと厳しい意見が出ました。
この日は、市民約350人が参加し、地元選出の維新大阪市議が、2月の大阪府知事と大阪市長の出直しダブル選の経緯や、大阪市議団が前回市議選で都構想を公約に掲げていないため、法定協早期設置に反対していることを説明しました。
質疑応答は非公開でしたが、参加者によると、会場からは「2回否決された都構想になぜまた挑戦するのか」「特別区になった後の財源の説明がない」といった否定的な意見が多く聞かれ、市議団の説明に怒号が飛ぶ場面もあったと言います。
過去2回の住民投票で賛成票を投じたという城東区の女性は、「今後の大阪をどうしたいかという前向きな意見がなかったのは残念」と話し、同区の男性は「もっとメリットを強調してもらわないと、賛成することは難しい」と語りました。
集会後、竹下隆幹事長は記者団に「できるだけ多くの市民の声をいただくために対話集会を開催した。回数を重ねるごとに説明もクリアになってくると思う」と語りました。
維新による大阪都構想のタウンミーティングは、かつては支持者がどっと押し寄せていましたが、様相は一変し、大阪都構想に反対の市民が結集する事態になっています。
維新が2010年の結党のきっかけとなった大阪都構想は、2015年と2020年に大阪市民の住民投票が行われ、いずれも僅差ながら反対多数で否決されました。維新の大阪市議団が「3度目の挑戦」に慎重なのは、「2023年の統一地方選で大阪都構想を公約にしていない」というのが理由です。2023年の統一地方選で、維新は初めて大阪市議会で過半数を獲得しました。トコーソーは大阪府議会、大阪市会(市議会)の両議会で決定する事項が多く、それらをクリアしなければ住民投票までこぎつけられません。吉村知事は「(知事と府市議員の任期である)来春までに3度目の住民投票実施」にこだわっており、府市両議会で過半数があるうちにという思惑が見えます。
大阪市を廃止して特別区に分割するトコーソーでは、政令指定都市である大阪市の財源と権限が大幅に大阪府に移ります。そのため府市首長、府市両議会の議員らで作る協議会を設置し、「幾つの特別区に分けるのか」「大阪府と特別区の財政調整はどうするのか」など設計図である「特別区設置協定書」を作成する必要があります。作成作業にかかる時間を考えれば、来春の住民投票はかなりきついスケジュールで、吉村知事は府市両議会とも5~6月の議会で設計図を作成する協議会の設置を決定するよう求めています。
維新市議団は、5月の大阪市議会でこの協議会の設置を決定すべきかどうか「市民意見を聴く」として、タウンミーティングを開催することに。
昨秋、自民党と維新は連立政権を組み、維新は国政与党となりました。吉村知事は与党の党首となり、大阪が「副首都」になるのを目指しています。「大阪都構想による府市一体化は、副首都にふさわしい大都市制度だ」として、副首都と大阪都構想をセットで進めようとしています。
大都市法(大都市地域における特別区の設置に関する法律)は、大阪市を廃止して特別区に分割する「大阪都構想」を実現するために2012年に成立しました。政令指定都市から特別区に格下げになると大阪市民が不利益を被る可能性があり、「それでもいいですか」と確認するため大阪市民の住民投票で最終決定する第7条が盛り込まれました。副首都法案が成立すれば大都市法が改正され、大阪府内全域で住民投票ができる(大阪市廃止特別区設置と大阪都への名称変更)というのは、大阪市民からすればたまったものではありません。大阪市外の住民の投票で大阪市廃止を決めるのは憲法92条違反との指摘も出ています。
憲法92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」となっています。地方公共団体の基礎自治体は、市町村、東京都の23区です。大阪市廃止のことは大阪市民が決めるです。
大阪都になるというのも、よく意味がわからないし、大阪市廃止・分割についても過去2回の住民投票による否決で決着がついています。3度目の住民投票は不要です。大阪市廃止・分割に反対です。 (河野)
賃上げ目指し連帯しよう!
春闘はいま、私たち労働者の暮らしを守れるかどうかの大きな岐路に立っています。物価の上昇は止まらず、食料品や光熱費など、日々の生活に欠かせない支出が増え続けています。これは働く人だけでなく、多くの市民にとっても共通の悩みです。しかしその一方で、賃金は十分に上がらず、実質賃金は伸び悩んでいます。「働いても生活が楽にならない」――この切実な声は、いま社会全体に広がっています。
こうした現状のもとで問われているのは、「企業は誰のためにあるのか」ということです。大企業を中心に、企業の内部留保は積み上がり続け、その総額は500兆円を超えています。本来、内部留保は将来への備えとして重要ですが、これほどまでに膨らんでいる一方で、賃金や暮らしに十分回っていない現実は見過ごせません。
現場で働く私たちは、効率化やコスト削減の名のもとに負担を担い続けてきました。非正規雇用の拡大や人手不足の中での業務増加など、そのしわ寄せは現場に集中しています。そしてこれは、サービスの担い手として市民生活を支える現場そのものでもあります。労働条件の悪化は、働く人だけでなく、社会全体の安心や質にも影響を及ぼします。
いま必要なのは、内部留保を賃上げに回すという決断です。賃上げは単なるコストではなく、暮らしを支え、消費を活性化させ、地域経済を元気にする力になります。賃金が上がれば、家計にゆとりが生まれ、地域での買い物やサービス利用も増え、結果として経済の好循環につながります。これは労働者だけでなく、地域で暮らすすべての人にとって重要な課題です。
そのためにも、職場から声を上げること、そして社会全体でこの問題を共有することが欠かせません。一人ひとりの声は小さくても、つながれば大きな力になります。労働組合はその中心として役割を果たしながら、市民との連帯も広げていくことが求められています。
今回の春闘は、単なる一時的な対応にとどまらず、日本の賃金のあり方を変える重要な機会です。内部留保という現実を直視し、働く人への公正な分配を進めることが、社会全体の安定と発展につながります。すべての人が安心して働き、暮らせる社会をめざして、いまこそ力を合わせていきましょう。(宮城 弥生)
コラムの窓・・・ミナト神戸、波高し!
去る4月11日、神戸華僑歴史博物館(KCCビル)敷地の一角で「『神戸平和の碑』の集い2026」が開催され、今年も参加しました。2008年7月に除幕されたこの碑は、神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会が設置したものであり、碑文は、日英朝中の4ヶ国語で刻まれています。その内容は次の通りです。
「アジア・太平洋戦争時期、神戸港では労働力不足を補うため、中国人・朝鮮人や連合国軍捕虜が、港湾荷役や造船などで苛酷な労働を強いられ、その過程で多くの人々が犠牲になりました。私たちは、この歴史を心に刻み、アジアの平和と共生を誓って、ここに碑を建てました」
同敷地内には、「非核神戸方式の碑」もあります。この碑は1975年に神戸市議会によって決議された「核兵器を積載した艦艇は神戸港への入港を一切拒否する」という内容に基づいています。非核「神戸方式」の碑は、市民が建立したもので、非核神戸方式を広く市民に定着させ、全国と世界にアピールすることを目的としています。碑の台座には、非核「神戸方式」のもとになった市議会決議が日本語・英語・中国語・ハングルで書き込まれています。
どちらも、本来ならもっと海沿いの公的施設に設置すべきと思うのですが、例によってそれは拒まれ、神戸華僑に受け入れられたものでした。なお、同じ海岸通りを西に向かうと「戦没した船と海員の資料館」(全日本海員組合関西地方支部)があります。こちらにも寄ってみようと少し早めに行ったのですが、どうも日曜日は休みのようでした。
海員の不戦に誓いを掲げたこの施設には、「中国との全面戦争から1945年8月の軍国日本の敗北まで、多くの船員と民間船舶が戦時動員され、南方海域で日本沿岸・周辺海域で犠牲となった。『海に墓標を』は、絶対に記憶を風化させてはならないと叫ぶ船と人の無言の訴えである」等と呼びかけています。
さてこの神戸港では、この国トップの軍需を誇る三菱重工と川崎重工が交互の潜水艦を建造しています。その点では〝平和の港〟にそぐわないのですが、このところ「非核神戸方式」も風前の灯火となっています。時が来れば、京都の祝園弾薬庫から海自阪神基地を中継地点とし、弾薬庫のミサイルを南西諸島に運ぶ、といった事態も予想されるとか。
さらにそれに追い打ちをかけるように、4月1日にはポートランド沖にある神戸空港を特定利用空港として利用する動きが明らかになりました。特定両空港・特定利用港湾指定は、滑走路や岸壁補修に国が拠出する事でひも付きにし、いざという時には自衛隊(軍隊)が優先利用することになります。さらに県内では、伊丹空港(大阪空港)や姫路港も指定されるとか。
昨年3月、50年ぶりにに摩耶埠頭に米国艦船ウォーリア号が入港。今年3月、自衛隊艦船3隻がポートランドに石岸壁で一般公開され、数千人の市民が見学したとか。まるで戦争準備を急ぐように、神戸の空と海の軍事化が進もうとしている時に、多くの市民は艦船に歓声をあげているという。これは喜劇なのか悲劇なのか、笑うことも泣くこのもできない、憂いの春です。(晴)
下記は戦争が終わった時政府が発表した被害の総数です。
官・民一般汽船 3,575隻
機帆船 2,070隻
漁船 1,595隻
合計 7,240隻
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